NECは2012年1月26日、業績予想を下方修正し、2012年3月期の連結最終損益が1000億円の赤字となる見込みだと発表した。従来予想は150億円の最終黒字だった。連結売上高予想は前期比0.5%減の3兆1000億円(従来予想は3兆2500億円)に、営業利益予想は21%増の700億円(同900億円)に下方修正した。
下方修正の背景には、三つの誤算があった。
まずは昨年タイで発生した洪水により、サーバーなどを主軸とするプラットフォーム事業が大きく下振れしたこと。洪水の影響で通期の売上高が220億円、営業利益が90億円減少する見通しだ。
二つ目は携帯電話事業の不振だ。2011年10-12月期のスマートフォンの売り上げが計画に達せず、年間出荷計画を650万台から500万台へ下方修正した。これにより、パーソナルソリューション事業で、通期売上高が550億円減少する。
さらにキャリアネットワーク事業でも、欧州景気の影響から各国の通信事業者が投資を抑制したため、従来予想と比較して通期の売上高が700億円減少する見通しだ。
業績悪化に伴い、NECは繰り延べ税金資産を約740億円取り崩す。さらに「事業構造改革費用」として約400億円を計上。結果、最終損益が1150億円悪化し、1000億円の最終赤字となる見込みだ。
構造改革の一環として、2013年3月期の前半にグループ従業員を国内外で1万人削減する。会見した遠藤信博社長(写真)は「苦渋の決断だが、3兆1000億円の売上高水準でも黒字を出せる体質作りには必須だ」と述べた。
固定費削減により、2013年3月期の営業利益は400億円改善する見込みだ。遠藤社長はITサービス、キャリアネットワーク、社会インフラ、エネルギーを「4本柱」と位置づけ、投資を集中することで体質強化に取り組むとしている。
同時に発表した2011年4~12月期の連結売上高は、前年同期比3.5%減の2兆1122億円。連結営業損益は同110億円改善したが、14億円の赤字となった。ITサービス事業が営業黒字に転換した一方で、携帯電話の不振などが響いた。