2012年1月26日、NTTドコモは25日に東京の一部地域で発生した通信障害について会見。「信号量の見積もりミス」が原因だったことを説明した(関連記事:[続報]ドコモが25日の通信トラブルで会見、原因は「信号量の見積もりミス」) 。この見積もりミスが明らかになったのは、皮肉にもスマートフォン契約者の増加対応を目的とした新型パケット交換機への切り替えが発端だった。

写真1●通信障害発生から回復までの経緯
写真1●通信障害発生から回復までの経緯
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写真2●写真2●発生した事象
写真2●発生した事象
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 まずは、トラブルの発生状況を時間を追って説明しよう。

 新型パケット交換機への切り替え作業は、25日午前0時から始まった(写真1)。具体的には、37台の無線制御装置を収容している従来型パケット交換機7台を、新型パケット交換機3台に切り替えた。この37台の無線制御装置は、目黒区、大田区、品川区などのエリアをカバーしている。

 この3台の新型パケット交換機には、既に文京区、江東区などのエリアをカバーする23台の無線制御装置を収容済みだった。1月20日に、同地域の無線制御装置を収容する従来型パケット交換機4台から切り替えていた。このときの切り替えに際しては問題が発生しなかったため、25日の切り替えに至ったわけだ(写真2)。

 こうして、25日の切り替えによって計11台の従来型パケット交換機が計3台の新型パケット交換機によって置き換えられ、都内14区をカバーしている計60台の無線制御装置を収容するはずだった。実際、25日午前3時40分に切り替え作業は終了した。

 しかし、午前8時26分に問題が発生した。処理する制御信号量が増加し、一部の制御信号が破棄される事象が発生したのだ。この時点で一部ユーザーの携帯電話には、発信できないといったトラブルが発生していたことになる。

 さらに約40分後の午前9時9分、処理すべき制御信号量はいっそう増加し、この時点で音声とパケット通信の規制を実施したという。この規制を実施したことにより、さらに多くのユーザーの携帯電話で、発着信できない、またはしづらいといった事象が発生した。その影響は最大252万人に及んだ。

 そこでNTTドコモは午前10時56分、無線制御装置を収容するパケット交換機を新型から従来のものに戻す作業を開始した。通信規制は、切り替え作業が終了した部分から順次解除。午後1時8分にすべての規制を解除した。この時点で発着信しづらい、位置登録しづらい(圏外になる)といった通信障害は復旧した。

 ドコモは、この間「パケット交換機に故障」「パケット交換機が不安定」といった説明をしていたが、事実は故障ではなく、前述の通り、新型パケット交換機の処理能力を上回る制御信号量によって、輻輳(ふくそう)が発生していたのだ。根本的な原因は、「制御信号量の見積もりミス」だった。