写真1●2012年3月に発売するミネラルウオーターの新商品「フロムアクア」。ボトルとキャップが一体化した「落ちないキャップ」が特徴
写真1●2012年3月に発売するミネラルウオーターの新商品「フロムアクア」。ボトルとキャップが一体化した「落ちないキャップ」が特徴
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写真2●ビッグデータ活用について説明するJR東日本ウォータービジネスの田村修・代表取締役社長
写真2●ビッグデータ活用について説明するJR東日本ウォータービジネスの田村修・代表取締役社長
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 東日本旅客鉄道(JR東日本)の子会社で、駅構内の飲料自動販売機を運営するJR東日本ウォータービジネス(東京都渋谷区)は2012年1月24日、ビッグデータ(関連記事)を活用したミネラルウォーター「フロムアクア(FROM AQUA)」の新商品(写真1)を発表した。3月6日から同社の自販機で販売する。

 フロムアクアの既存商品は、ブランドイメージで勝る国内大手や外資飲料メーカーのミネラルウオーターに押されて伸び悩んでいた。そこで、「駅でミネラルウオーターを購買し、移動中に飲む人」をターゲットにし「落ちないキャップ」の採用で特徴を出した。

 通常のペットボトルは開栓時にキャップとボトルが外れるが、新商品にはキャップとボトルをつなぐバンドが付いておりキャップが外れない。片手で繰り返し飲むことができ、移動中に飲むのに便利だ。こうしたキャップを採用するのは国産ペットボトル入りミネラルウオーターで初めてだという。容器コストは高めで、家庭やオフィスで水を飲む人にとってはメリットはないが、あえて移動中に飲みやすい特徴を打ち出すことにした。

 田村修・代表取締役社長(写真2)は「列車に乗る前にミネラルウオーターを買って移動中に飲むという行動は意外だった。新しいコンセプトの有効性を裏付けるのにビッグデータが役立った」と話した。

自販機とSuicaなど電子マネーのデータを分析

 具体的なデータの分析は以下のような過程で進めた。まず、同社が展開する自販機約9600台のうち、半数の約4500台に搭載した決済端末「VT-10」から得られるPOS(販売時点情報管理)データを収集する。VT-10では単品・時間別売り上げが把握できるのに加え、Suica(スイカ)などの電子マネーカードを利用した場合は、カード固有番号(IDi)を基にリピート購買の回数が分かる。さらに、Suicaポイントクラブ会員(約140万人)については、入会時に登録された性別や年代、居住エリア(郵便番号)を把握できる。

 JR東日本ウォータービジネスは顔の画像認識で年代や性別を自動判別する「次世代自動販売機」(関連記事)も展開している。ただし、まだ設置台数が約200台と少ないため、今回の新商品開発では画像認識データは使わず、次世代自動販売機にも内蔵しているVT-10のデータのみを活用している。

 これらのデータを分析すると、フロムアクアの既存商品は、朝のラッシュ時間帯の購買が多いことが分かってきた。さらに、居住エリア、購買エリア(自販機の設置場所、都心・郊外などに分類)、時間帯別売り上げの3つの軸でクロス集計したところ、「郊外居住者が朝の出勤前に乗車駅でフロムアクアを購入している」という購買行動が見えてきたという。こうしたデータを基に、「移動中に飲みやすい」新商品を開発した。

 分析対象のデータ量は年間約100ギガバイト、約2億レコードに及び、VT-10の導入拡大に伴って増え続けているという。JR東日本ウォータービジネスの既存システムでは処理要求から結果が出るまでに数時間かかるようになったため、新たに2011年8月に富士通ビー・エス・シーのオンメモリーデータベース「Oh-Pa 1/3(オーパ・ワンサード)」(関連記事)を導入して分析を高速化。数十秒で結果が返ってくるようになった。