特許庁が5年前から進めてきた基幹系システムの刷新プロジェクトを中止する方針を固めたことが、日経コンピュータの取材で分かった。当初は2011年1月の稼働を予定していたが、業務分析の遅れなどから要件定義と設計が難航。稼働を3年遅らせたが、立て直すことができなかった。

 政府が策定したレガシーシステムの刷新指針に基づき、特許庁は2004年10月に「業務・システム最適化計画」を策定した。この刷新指針は、特定のITベンダーとシステム保守などを長期契約することによるITコストの高止まりを解消する目的で策定されたものだった。同庁はさらに、入札に分割調達の仕組みを採用して競争原理を働かせることを目指した。

 要となるシステム設計とシステム基盤の構築については、東芝ソリューションが入札予定価格の6割以下の99億2500万円で落札した。ところがプロジェクトが始まると、現行の業務やシステムを理解した職員と技術者が足りない問題が表面化、進行が滞った。特許庁はアクセンチュアと30億円超の契約を結び、同社にプロジェクト管理支援を委託していたが、それでも遅れは防げなかった。

 特許庁のシステム刷新を巡っては、外部の有識者による「特許庁情報システムに関する技術検証委員会」が現在、プロジェクト継続の可能性を調査している。近々、同委員会が報告書をまとめる計画だ。システム刷新に携わる関係者によれば、報告書はプロジェクトの中止を促す内容になる可能性が高いという。報告書を受けて、特許庁はシステム刷新の中止を決めるとみられる。