写真1●小林製薬の小林豊代表取締役社長
写真1●小林製薬の小林豊代表取締役社長
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 小林製薬は2012年1月19日、2月以降に順次発売する「春の新製品」の説明会を開いた。小林豊代表取締役社長(写真1)は「今年は『暑さ対策製品』市場が大きく伸びるはずだ。変化を捉えた製品提案で、新たな需要を取り込みたい」と説明。2012年夏場(4~9月、以下同じ)に、この分野で前年比33%増の売上高51億円を目指すという強気の目標を掲げた。

 小林製薬の推計によると、氷枕や冷却材などの「暑さ対策市場」は2010年夏場の44億円から、2011年夏場は75億円(前年比70%増)まで急拡大した。2011年は猛暑だった前年に比べて穏やかな天候だったにもかかわらず、エアコンの代替として家庭やオフィスで冷却材を使う“節電需要”が急増したからだ。

冷夏に備えるSCM徹底

 自社製品でも、風邪が流行する冬場向けの冷却材「熱さまシート」の売り上げが夏場に急増するなどの傾向が見られ、2011年夏場の売上高は33億円(前年比19%増)に伸びた。同社は、暑さ対策市場全体の拡大をまだ十分に捕捉できていないと見て、新製品投入でさらに強化する考えだ。

写真2●小林製薬の2012年春の新製品。手前に並ぶ「暑さ対策製品」を重視
写真2●小林製薬の2012年春の新製品。手前に並ぶ「暑さ対策製品」を重視
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 具体的には、首用の「熱さまひんやりお出かけスカーフ」や頭用の「ヘッドクール」などを投入する(写真2)。小林社長は「当社は頭のてっぺんから足の先まで冷やせる素材を持つ唯一のメーカーだ」と自負する。

 目標達成のためには在庫の積み増しが必要で、もくろみが外れた場合は不良在庫になる恐れがある。「東京電力管内では料金値上げなどの動きが具体化しており、全国的にも節電需要は衰えないだろう。ただし、冷夏で暑さ対策製品が売れなくなるリスクはある」(小林社長)。

 そこで「SCM(サプライチェーン・マネジメント)部」が中心となって進めてきた季節品需給調整の取り組み(関連記事)をさらに進化させる考えだ。「熱さまシート」など生産調整が容易な製品については、営業現場の動向や小売店頭でのPOS(販売時点情報管理)データなどの情報を集約し、需要収束を早めに察知して生産を止める体制を整える。スプレー容器など手配に数カ月単位の時間がかかる部材については、冷夏になることが判明してから生産調整をしても間に合わないため、半製品のまま保管して翌年の製品に流用できるようにする。

「震災で全てが変わった」

 節電需要急増のほかにも、小林社長は「東日本大震災を契機に、当社を取り巻く環境の全てが変わった」と話した。2011年春に投入した新製品が全般に不調だったことを認めたうえで「開発中心型企業への復権を図りたい」と強調した。

 不調の要因の1つは、製造子会社の仙台小林工場(宮城県大和町)が東日本大震災で被災して復旧までに約2カ月を要したことだ。「液体ブルーレット」など大型既存製品の製造が滞った。製品不足のため空いた棚スペースを奪うべく営業攻勢をかける競合他社への防戦に労力を割かれ、新製品売り込みどころではなかったという。2012年は態勢を立て直し、5%台まで落ち込んだ新製品売上寄与率(発売1年目の新製品売上高が全体に占める比率)を早期に10%まで高めたいという。