米Appleは現地時間2012年1月13日、「Supplier Responsibility Progress Report」および「Supplier Code of Conduct」という報告書を公開し、同社が取引するEMS(電子製品製造受託サービス)や部品供給業者を明らかにした。

 同社が取引業者のリストなどを公開するのは、これが初めて。同社のスマートフォン「iPhone」やタブレット端末「iPad」を受託生産する台湾・鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry)傘下の中国・富士康科技(Foxconn Technology)では、従業員の自殺が相次ぎ、Appleはこれまで工場の労働条件などについて実態調査を行ってきた(関連記事:自殺相次ぐiPhoneの中国工場、賃金を30%引き上げ)。

 Appleは報告書で、合計229施設を監査した結果を公表した。それによると、93の施設で半数以上の従業員が週60時間の労働時間制限を超えていたことを示す記録が見つかった。また108の施設で、法律で義務付けられている超過勤務手当を支払っておらず、15の施設では外国人契約社員が、職業あっせん業者に法外な手数料を支払わされていた。このほか環境汚染に関する問題も見つかっており、Appleは取引企業と協力して改善に取り組むとしている。

 中国などの工場における劣悪な労働条件をめぐっては、製造や部品供給の最終決断を行う立場であるAppleなどの米企業側に社会的責任があるとして、米国の人権擁護団体などが厳しく非難しており、今回の報告書はそうした批判を受けた対応と見られている。

 なお、Appleは併せて、同社の調達支出額の97%を占めるという156社の社名を公表した。この中には、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、NECといった日本の大手メーカーに加え、アルミニウムプレス加工の銭屋アルミニウム製作所(大阪府池田市)や、水晶振動子を手がける大真空(兵庫県加古川市)といった中堅専門メーカーの名も含まれている。

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