V-Low帯を利用したマルチメディア放送の福岡地域における実証実験(関連記事)の準備を進める九州・沖縄マルチメディア放送(FM東京や地域のJFN加盟FM局、JFNのほか、様々な分野の企業が出資)は、実証実験を通じて「サービスの検証」および「受信機の開発促進」を進めていく計画だ。

<オープンな協議会を設立へ、福岡V-Low放送運用規定を策定など>

 このため、「福岡マルチメディア放送 実験協議会」(仮称)を設立し、実験内容の共有や「福岡V-Low放送運用規定」の策定を行う。運用規定は、デジタル放送の放送フォーマットや、コンテンツを受け取った受信機の振る舞いを規定するものであり、ビジネスモデルの策定と表裏一体のものである。福岡V-Low放送運用規定は、将来のマルチメディア放送の運用規定策定に寄与できると期待する。その運用規定の策定などの作業を行う母体となる実験協議会には、九州・沖縄マルチメディア放送の出資企業でなくても、福岡V-Lowマルチメディア放送に興味を持つ企業・団体は、誰でも参加できることにする。協議会には、出資企業に加えて、受信機メーカーやチューナーICなどの半導体メーカー、地元自治体、大手新聞社なども参加を予定する。

<部品メーカーにも広く情報を開示し参加を求める>

 県域放送を想定した実験を計画しており、福岡タワーに親局を設置するほか、九州自動車道のサービスエリア/パーキングエリアなどに中継局を設置することを計画する。V-Low帯の周波数を使って本放送と同様の電波を発射することで、受信機の開発を促進する。V-Lowチューナーや小型アンテナのフィールド試験に注力するため、アンテナやチューナーメーカーに広く情報を公開し参加を求める。例えば、パナソニック セミコンダクター社はV-Low、V-High、UHFの三つの入力に対応する広帯域RF回路を内蔵するチューナーICを開発しており、協議会にも参加を予定する。このほか、FM放送との混信の有無の実フィールド試験、ギャップフィラーに相当する制度導入に向けた検討・実証実験、屋内受信の向上に向けた手法の検証などを実施していく計画。

<自動車端末向け、安心安全、課金、サイネージなどサービス検証>

 福岡先行実験では、各種のサービス検証を進めていく。車載端末向けでは、例えば車両位置に応じた交通情報やPOI(Point Of Interest)情報の提示機能を検証する。災害時の情報配信の検証(TMCC信号を用いた自動起動や、自治体などの情報を集約するサービスの活用や接続システムの開発など)、地域情報データ放送の実証実験(エリアでフィルタリングして表示)、課金の検証なども行う。課金の検証では、通信機能を持たない受信機での課金の仕組みや、認定基幹放送事業者内共通鍵システムの開発などを想定する。さらに、放送波ルーター/サーバー型受信機での実証実験やデジタルサイネージ向け放送実験などを予定する。