V-Lowマルチメディア放送の実証実験プロジェクト(関連記事)の一つである宮城県の実験は、7セグメントの放送を想定する。現在、実験推進母体となる宮城V-Lowマルチメディア放送実験協議会(仮称)の設立準備中であり、この協議会が主体となって実験を進めていく。東北3県の地デジ化が終了したあと、2012年4月に予備免許を取得し、2012年6月~2013年2月に実験を行う計画。送信所は東北放送の本社構内に設置を予定する。

 実験では、防災・減災へのV-Lowマルチメディア放送の利用を探る。東日本大震災の教訓として、「防災行政無線」と「通信」と「放送」の相互補完が重要とし、防災行政無線の補完としてV-lowマルチメディア放送の活用を目指す。

 防災行政無線の補完をV-Lowマルチメディア放送が担うため、実験では自治体と放送局の連携のあり方を探る。このため、例えばコモンズネットワーク(ワンソースマルチユースを実現する仕組み)の活用を図る。地方自治体にとって現状、放送は「間接広報」であり、防災行政無線や広報車、ホームページによる直接広報とは異なる。V-Lowマルチメディア放送による「自治体セグメント」を実現すれば、自治体にとって放送が「直接広報」になると位置づける。

コミュニティ放送はIPDC蓄積型によるエリア限定も想定

 V-Lowマルチメディア放送としては、県域放送として7セグメントの利用を想定しており、その一つが自治体セグメントである。ここでは、ハード事業者がソフト事業者としてIPデータキャスト(IPDC)によるデータ放送を実施する。県下の自治体が住民に提供する各種警報、災害情報、生活情報を提供するセグメントと位置づける。このほか、全局EPG(Electric Program Guide)などもこのセグメントで送信する。

 残る6セグメントは、音声優先セグメントが1、一般セグメントが2(実用化時にNHKによる放送を想定しているとみられる)、3セグメントによるマルチメディア放送という構成である。

 このうち、音声優先セグメントではラジオ放送のサイマル配信の用途を想定する。音声圧縮技術を使えば5チャンネル程度をサイマル放送できる。ただし、コミュニティ放送(臨時災害放送局を含む)などを想定し、番組をファイル化しIPDCによる配信を行うことを提案している。コミュニティ放送は、通常時はエリアを制限する。災害発生時には臨時災害放送局などエリア制限を解除し、遠隔地に避難した場合でも情報を共有できるようにすることを想定する。