「特定機器の指定は関係者の合意が前提」

 次に(2)の、特定機器への該当性である。1審判決では、SARVHの主張にほぼ沿う形で、アナログ非搭載のDVDレコーダーが特定機器に該当するとの判断を示していた。

 今回の高裁判決では、補償金の対象機器を定める際には「その当時利用されていた機器が対象とする録音・録画源と録音・録画規格を前提にし、当該録音・録画機器の普及の状況や利用実態が検討され、関係者の協議等に基づく合意の程度が勘案されてきた」と指摘。2000年の著作権法施行令改正で特定機器にDVDを追加した当時は、「録画源がアナログテレビ放送であることが念頭に置かれ、この録画源についてDVD録画が行われる機器を録画補償金の対象とする点で関係者の大方の合意が得られたことから、同号の追加が閣議決定された」とした。

 その上で判決文は、著作権法施行令の特定機器に関する記述のうち、DVDについて定めた第1条第2項第3号について着目。ちなみに同号は、

著作権法施行令 第1条第2項第3号

 光学的方法により、特定の標本化周波数でアナログデジタル変換が行われた影像又はいずれの標本化周波数によるものであるかを問わずアナログデジタル変換が行われた影像を、直径が百二十ミリメートルの光ディスク(レーザー光が照射される面から記録層までの距離が〇・六ミリメートルのものに限る。)であつて次のいずれか一に該当するものに連続して固定する機能を有する機器

  • イ 記録層の渦巻状の溝がうねつておらず、かつ、連続していないもの
  • ロ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続しているもの
  • ハ 記録層の渦巻状の溝がうねつており、かつ、連続していないもの

という条文である。

「アナデジ変換はデジタル放送に非適用」

 判決文は、このうち「アナログデジタル変換が行われた」という部分に注目。この要件は「アナログ放送をデジタル変換して録画が行われることを規定したものであり、しかも、この変換は、DVD録画機器に搭載されるアナログチューナーからのアナログ信号を対象にするものである」との判断を示した。つまり、アナログ放送をDVDに録画する場合のみ補償金の対象となり、「アナログチューナーを搭載しないDVD録画機器については、アナログデジタル変換が行われず、したがって3号該当性は否定される」と結論づけている。

 判決文ではさらに、こうした判断を示した詳細な理由についても言及している。まず、補償金の対象機器をどう定めるかは「極めて政策的な意味合いを持つ」ものであると指摘。さらに、「どの範囲まで対象に含めていくかは、(私的録音録画補償金制度について定めた)著作権法第30条第2項が制定された趣旨にかんがみ、政令を改正する都度検討されるべきものとされたことが明らかである」として、対象機器の追加に際してはその検討過程が重要であるとした。

 その上で、「改正で追加された施行令の規定についての解釈では、改正に際して念頭に置かれた実態の範囲に即してされなければならないし、とりわけ、協力義務違反を問われるべき前提としての特定機器該当性を考えるに際しては、施行令の文言に多様性があるとすれば、厳格でなければならない」との見解を示した。