私的録画補償金管理協会(SARVH)がデジタル放送専用録画機(つまりアナログ放送は録画しない装置)の補償金を期限までに支払わなかった東芝を相手取って起こした訴訟の判決が2011年12月22日、知的財産高等裁判所で下された。知財高裁は、「デジタル放送専用録画機は補償金制度の対象になると解釈するのは困難」として、SARVHの請求を棄却した。2010年12月27日の第一審では、東京地方裁判所が判決の中で「デジタル放送専用録画機は補償金制度の対象になる」という判断を示していたが、これとは異なる解釈を示した。

 今回の裁判の争点は二つある。一つは、補償金制度におけるメーカーの補償金の支払い請求および徴収への協力義務である。もう一つは、「デジタル放送専用録画機は補償金制度の対象になるか否か」である。

 知財高裁はまず、「メーカーが違反に至った経緯や違反の態様によっては指定管理団体(SARVH)が被った損害を賠償しなければならない場合も想定される」として、SARVH側の請求が成り立つ可能性があるという判断を下した。

<「アナログ放送をデジタル変換する機器が補償金の対象」という判断示す>

 その後、デジタル放送専用録画機が補償金制度の対象となる特定機器に該当するかについての考えを示した。特定機器の条件としては、「放送波がアナログであることを前提にして、アナログデジタル変換を行うことが規定されていると解釈できる」という。そのうえで、「メーカーを含む大方の合意が得られた録画源であるアナログ放送から離れ、デジタル放送のみを録画源とするDVD録画機器が特定機器に該当すると解釈するのは困難」として、補償金制度の対象にならないという判断を示した。

 地上アナログ放送は2011年7月24日に終了しており、流通市場に出回っている録画機器にはアナログチューナー非搭載のものが少なくない。今回の判決が確定すると、これらの機器はすべて補償金制度の対象から除外されるということになる。

<「非常に不本意」「上告する」とSARVH>

 この判決を受けてSARVHは2011年12月22日に会見を開いた。訴訟代理人の久保利英明氏は今回の判決について「非常に不本意な判決。上告し、最高裁判所の判断を求めたい」と述べた。同じく訴訟代理人の西本強氏は知財高裁の特定機器に対する解釈に疑問を呈した。「補償金制度の対象となる特定機器が、メーカーを含む大方の合意が得られるかどうかで決まるというのは、あいまい過ぎる。既にある制度の解釈として、いかがなものか」とした。今回の判決が確定した場合には、「このままではSARVHは補償金をクリエーターに還元するという役割を果たせなくなる」という懸念を見せた。

 なおSARVHは2011年12月22日に、即日最高裁への上告を行った。