米AT&Tは現地時間2011年12月19日、米T-Mobile USAの買収計画を取りやめることでT-Mobile USAの親会社Deutsche Telekomと合意したと発表した。これまで米司法省(DOJ)から独占禁止法訴訟が提起され、米連邦通信委員会(FCC)への認可申請手続きなどで計画が難航していたが、現状では買収を成功させることができないと判断した。

 これに伴いAT&Tは、Deutsche Telekomに支払う違約金として2011年第4四半期(10~12月期)に40億ドルの税引き前損失を計上する。またDeutsche Telekomとは今後ローミング契約を結ぶとしている。

 AT&TがT-Mobile USAを約390億ドルで買収すると発表したのは2011年3月。しかしこれを受け同年8月にDOJが訴訟を提起した。一方でFCCも聴聞会を開く意向を示すなど買収阻止に向けた動きを見せたため、AT&TとDeutsche Telekomは「司法省との訴訟に注力する」ことを理由に、FCCへの認可申請をいったん取り下げた。その後、AT&T側とDOJは裁判を延期することで合意。AT&Tは2012年1月12日に報告書を提出し、買収計画を進めるか、代替計画を進めるかを決定することになっていた(関連記事:AT&TのT-Mobile USA買収計画、米司法省と裁判の延期で合意)。

 米メディア(Wall Street Journal)は、AT&Tは当局からの承認獲得に向けT-Mobile USAの資産売却を検討していたが、良い妥協案が見つからず、ほかの選択肢もなくなっていたと報じている。

 AT&TのRandall Stephenson会長兼最高経営責任者(CEO)は12月19日に出した声明で、「インターネットは米国経済を回復させ、雇用創出をもたらす重要な産業」とし、「しかしそれを実現するためには、企業が顧客の需要に十分応えられるよう(当局から)許されなければならない」と述べている。その一例として同氏は、現在FCCからの承認待ちとなっている、米Qualcommの無線周波数帯買収計画についても迅速に認められなければならないと主張している(関連記事:AT&T、Qualcommから無線周波数帯を19億2500万ドルで取得へ)。

[AT&Tの発表資料]