クラウドの種類(発表スライドから引用)
クラウドの種類(発表スライドから引用)
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 「中堅・中小企業がネットビジネスに参入するなら、クラウドコンピューティングの利用を検討してほしい。小さい初期投資と短い準備期間で始められる」。日経パソコンの勝村幸博副編集長は2011年12月15日、都内で開催中のイベント「スマートフォン&タブレット2011冬」において、クラウドを活用したネットビジネスについて解説した。

 まず勝村氏は、スマートフォンやタブレットといった機器の普及により、ネットビジネスの需要が高まっていることを紹介。大手企業ばかりではなく、中堅・中小企業にとっても、ビジネスチャンスになっているという。

 従来は、サービスを提供するためのハードやソフトを自前で用意する必要があったので、容易には参入できなかった。ところが近年では、コンピューター資源を時間貸ししてくれるクラウドが登場したため、参入のハードルが大きく下がったとする。

 クラウドには、アプリケーションを提供するSaaSのほか、アプリケーションの実行環境を提供するPaaSやIaaSがある(図)。ネットサービスを提供する事業者が利用するのは、PaaSやIaaSだ。

 クラウドを利用すれば、前述のように初期投資を抑えられるだけではなく、安価なコンピューター資源を利用できる。「大手クラウドベンダーでは、サーバーなどを大量に購入するため、調達コストが抑えられる」(勝村氏)ためだ。

 また、同じ型のサーバーを大量に設置しているため、管理の自動化が容易で、管理コストも抑えられるとしている。

 とはいえ、「クラウドが必ず“お得”かというと、そういうわけではない」と勝村氏は強調する。ハードやソフトを所有する場合と比較して、短期的には安くても、中長期的にはコスト高になることもあるという。

 例えば、既存の社内システムをクラウドに置き換える場合、長期的にみると、ハードやソフトを自前で購入した方が、トータルコストが低くなる可能性がある。

 クラウドでは、初期投資は不要だが、継続的にコストがかかる。一方、自前で持つ場合には、初期投資は必要だが、運用コストは抑えられる。このため、運用期間が長くなれば、ある時点でトータルコストが逆転する可能性がある。

 「収益を見込めるネットビジネスでこそ、クラウドは本領を発揮する」(勝村氏)。クラウドの料金を上回る収益を得られるようなビジネスなら、クラウドを利用する意味があるという。

 「クラウドなら、利用した分だけ料金を払えばよいことに加え、ユーザーが増えたら、自動的に資源を増強することもできる。ビジネスから撤退するのも容易。ネットビジネスへの参入を検討している事業者は、活用してほしい」(勝村氏)。