「これまでと違う仕事のやり方がある」。2011年12月14日、都内で開催中の米セールスフォース・ドットコムのプライベートイベント「Cloudforce 2011 JAPAN」で、マーク・ベニオフCEO(写真1)は、ソーシャルメディアによって顧客と従業員、企業のかかわりが変化し業務に好影響を与える事例などを紹介しつつ、“ソーシャル革命”がもたらす変化に企業がどう対応していくべきかといったビジョンを示した。
米セールスフォースは、「ソーシャルエンタープライズ」を掲げ、企業がソーシャルメディアを活用して効果を上げるためのものとして同社のクラウドサービスやツールなどを位置付けている(写真2、関連記事1:ソーシャルデバイド解消し「ソーシャルエンタープライズ」へ、セールスフォースのベニオフCEO、関連記事2:セールスフォースが企業ソーシャル化に向けたサービスを説明、HTML5化も進める)。
ベニオフ氏が述べる“ソーシャル革命”とは、中東の民主化運動のように実際に政権を変えるきっかけを作るほどの力をモバイル機器およびFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが持っており、しかもその端緒を個人がこれまでよりも早くダイナミックに切り開く時代が来ていることを指す。その背景には、SNSの利用者がメール利用者を上回り、モバイル機器によるインターネット接続がデスクトップを超え、さらに2年前には存在もしなかったiPadのような新しい機器が今までより早いペースで普及し始めている、といったことなどがあるとする。
ベニオフ氏は個人が変革の口火を切った例として、「世界各国の教養あるエジプト人に告ぐ。エジプト建国のために、すみやかに帰国されよ。#Jan25」(翻訳はセールスフォース)とのツイートをし、実際に現地で奮闘した米グーグル幹部のWael Ghonim氏の例を紹介。また「どう考えるべきかは分からないが」と前置きをしつつ、同じくTwitterのツイートが端緒になったと言われる「Occupy Wall Street」も、SNSなどによって「社会運動がうんと速く進んだ」例として挙げた。
そして「個人のグループが(ソーシャルメディアによって)組織となり、共通の価値観を持って一つの方向に動くことができる」と説明し、今後のキーワードとして、「スピード」「オープン・透明性(Open & Transparent)」「コラボレーション」「個人(Individuals)」「連携(Alignment)」「リーダーが存在しない(Leaderless)」を挙げた(写真3)。
基調講演でベニオフCEOは、日本に関するコミットメントとして、(1)企業への出資、(2)復興支援、(3)データセンターの開設---の3点を挙げた。(2)の復興支援については被災地などの自治体や企業に同社のサービス(「Saleforce CRM」や企業向けSNS「Chatter」)を無償提供していることなどに触れ、(3)のデータセンターの開設についてはNTTコミュニケーションズと共同で開設した「東京データセンター」が同日付で稼働開始したことを紹介。日本のユーザーが同社のサービスをこれまで以上に使いやすい環境を実現したことなどを述べた。
企業がソーシャルエンタープライズを実現するステップとして、ベニオフ氏は次のように説明する。まず「顧客のソーシャルプロファイルを作成すること」、その次に「従業員をソーシャル化すること」、そしてステップ3として「顧客自身や製品を含めたソーシャルネットワークを築くこと」である(関連記事:企業のソーシャル化は必然、個人と企業の間のデバイドを崩せ!)。
これらを実現するプラットフォーム/サービスを利用するためのライセンスとして、ベニオフ氏は講演の最後に「ソーシャルエンタープライズライセンス契約」を紹介した。同ライセンス契約は8月31日(米国時間)に発表済みで、全社員に「Salesforce Sales Cloud」「同 Service Cloud」「同 Chatter」「同 Radian6」「Force.com」「Heroku」「Database.com」の展開が可能な契約形態である。