写真●次世代ディーラーマネジメントシステムの共同開発を発表する日産自動車とマイクロソフト。左から順に日産の行徳セルソ執行役員グローバル情報システム本部長とアンディ・パーマー副社長、米マイクロソフトのキリル・タタリノフ マイクロソフトビジネスソリューション担当プレジデント、日本マイクロソフトの樋口泰行社長
写真●次世代ディーラーマネジメントシステムの共同開発を発表する日産自動車とマイクロソフト。左から順に日産の行徳セルソ執行役員グローバル情報システム本部長とアンディ・パーマー副社長、米マイクロソフトのキリル・タタリノフ マイクロソフトビジネスソリューション担当プレジデント、日本マイクロソフトの樋口泰行社長
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 日産自動車と米マイクロソフトは2011年12月12日、次世代のディーラーマネジメントシステムの共同開発に関する覚書を締結した。マイクロソフトのCRM(顧客関係管理)ソフトである「Dynamics CRM」とクラウド基盤サービス「Windows Azure」を使い、日本やアジアなど全世界のディーラーの業務を管理するシステムを構築する。

 日産が構築するディーラーマネジメントシステムは、接客や販売、修理受付といった、販売代理店の業務全般を支援するものだ。顧客が新車を購入するときの受注や顧客情報の登録、納期回答、点検の受け付けや部品交換・修理の履歴情報の管理などの機能を提供する。

 「次世代ディーラーマネジメントシステムでは、自動車ではなく顧客に焦点を当てる。日本流の『おもてなし』の対応を実現する」。日産のCIO(最高情報責任者)を務める行徳セルソ執行役員グローバル情報システム本部長は、新システムの狙いをこう説明する。

 新システムでは、販売代理店の営業担当者や保守担当者は、PCやタブレット端末を使って顧客情報を参照したり入力したりする。「顧客が来店した時点で、現場の営業担当者は顧客の情報を全て把握できるようにして、情報を探したり管理したりする手間を極力省く」(行徳執行役員)。接客に集中できるシステム環境を整えて、販売代理店の業務プロセス改善を支援する。

 新システムの構築にクラウドを利用する理由は、「拡張性と開発の柔軟性を評価した」(行徳執行役員)ためだ。日産はDynamics CRMを使って、世界共通機能と各国や地域の商習慣に合わせたローカル機能を作り分ける。当初は、Dynamics CRMで構築したシステムを日本国内にある日産のデータセンターで稼働させ、ローカル機能を世界各地のWindows Azureに分散させる、といったシステム運用形態を検討している。

 「自動車業界は月末に処理が集中して、システムに大きな負荷がかかる。この処理にクラウドを使うことで、処理のピークに合わせたシステムを日産が自社で所有する必要がなくなる」(行徳執行役員)。将来的には、Dynamics CRMで構築したシステム全体をWindows Azureで稼働させることも視野に入れている。

 日産は2012年12月に、日本国内の販売代理店に向けて新システムの試験導入を開始する。1年ほどかけて日本全国の販売代理店に導入し、その後は中国をはじめとしたアジア諸国へも展開する。クラウドを使うことで、自社開発に比べてシステムの年間運用コストを15~20%削減できるとみている。マイクロソフトはシステム設計・開発などに参加する。