写真1●トヨタの「プリウスPHV」と連動するスマートフォン
写真1●トヨタの「プリウスPHV」と連動するスマートフォン
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写真2●ホンダの「フィットEV」もスマートフォンとの連動を計画
写真2●ホンダの「フィットEV」もスマートフォンとの連動を計画
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 2011年12月3日に一般公開が始まる「東京モーターショー2011」では自動車メーカー各社から電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の出品が相次いでいる。これらのエコカーはスマートフォンとの融合を前提に開発が進められていることが、今回の展示で明確になった。

 モーターショーなので、自動車メーカーのブースでスマートフォンそのものが派手に展示されているわけではない。だがEVやPHVの脇に立つ説明員の中には、ポケットにスマートフォンをしのばせ、必要に応じて画面を操作しながら紹介する人が見受けられた。

 例えば、トヨタ自動車が紹介している2012年1月30日発売の「プリウスPHV」では、スマートフォンのアプリケーション「eConnect」を使って、車載電池の残量と充電管理や、遠隔での車内冷房スタート、街中での充電ステーション(G-Station)の位置検索、エコ運転の履歴管理などを提供する予定だ(写真1)。

 さらにトヨタ独自のサービスとして、プリウスPHVの発売に合わせて2012年1月末に開始する予定の「トヨタフレンド」もスマートフォンでの利用が前提になる。トヨタフレンドは、車を擬人化し、人と車がソーシャルメディアを介して“会話”する環境作りを目指しており、まずはプリウスPHVの充電管理といった話題からおしゃべりを始める。

 同じくホンダも2012年夏の発売を予定している「フィットEV」をお披露目し、こちらもスマートフォンからの充電管理といった機能を用意する計画だ(写真2)。ホンダは、東日本大震災後に話題になった車の「通行実績情報マップ」のコア技術である独自のナビゲーションシステム「インターナビ」と、EVのスマートフォン向けアプリの融合も進めていく予定。インターナビのチームがアプリ開発に参加している。

 フィットEVの開発に関わる本田技術研究所の藤本幸人四輪R&DセンターLPL上席研究員は「電池の残量管理や充電拠点の位置検索が欠かせなくなるEVは、スマートフォンとの連携が必須になる」と話す。遠隔操作や位置検索の端末として、我々の身近になったスマートフォンが最も有力なデバイスになるというわけだ。この点においては自動車メーカーの見解が一致しているし、さらにいえば、スマートフォンの利用者を満足させられない車は今後消費者に選ばれなくなる恐れまで出てきているといえるかもしれない。

 もっとも、充電拠点の位置検索においては、「建物の何階にあるのかといった『高さ』の位置情報も必要になるので、現状ではまだまだ課題がある」(藤本上席研究員)という。電池切れが迫って焦るドライバーを、安心して充電拠点まで導ける仕組み作りはEVの普及に欠かせない。今後スマートフォンが備える位置情報の精度向上が鍵を握りそうだ。

車とスマホの関係で再注目される音声認識技術

 車とスマートフォンの融合において、もう1つ見逃せないトレンドとして浮上してきたのが音声認識技術である。車のハンドルを握りながら、車内でも安全にスマートフォンを操作できるようにするため、自動車メーカー各社は音声認識の精度向上に力を入れ出している。その事実も東京モーターショー2011での一連のプレゼンテーションから見て取れる。

 トヨタが用意するトヨタフレンドのソーシャルメディア機能も、まずはスマートフォンでの文字情報でのやり取りから始まるが、いずれは人と車が音声で会話する形態に進化していくものと思われる。その時は音声認識にコンピュータの発話技術まで加わっていくことになるだろう。

 ドライバーがスマートフォンを使い、車に向かって「電池残量を教えて」「充電しておいて」「目的地周辺の渋滞状況はどう?」「最適ルートはどれ?」などと話しかける時代もそう遠くはなさそうだ。ソーシャルメディアでつながる友人の位置情報をスマートフォンが認識し、車に自動表示して、ドライバーの道案内をするといったことも、近い将来可能になるだろう。