AMDが2011年10月に発表した新型CPUのFXシリーズは、高性能PC向けをうたいながら競合のIntel製CPUだけでなく、AMDの従来製品であるPhenom IIシリーズより処理が遅い面があるなど、性能が芳しくない。供給も少なく、最上位モデルのFX-8150はごく少量が散発的にパーツショップに入荷するだけだ。こうした状況はなぜ起こったのか。AMDの担当者に聞いた。

 インタビューに応じてくれたのは、グローバルマーケティング デスクトップ・アンド・Fusionソフトウエア シニアマネジャーのササ・マリンコビク氏と、AMDソフトウエアマーケティング マネジャーのテリー・マケドン氏。

グローバルマーケティング デスクトップ・アンド・Fusionソフトウエア シニアマネジャーのササ・マリンコビク氏。
グローバルマーケティング AMDソフトウエアマーケティング マネジャーのテリー・マケドン氏。

 インタビューに先立ち、AMDはPCを取り巻く状況と、FX/A/Eの各シリーズがある、デスクトップPC向けの製品ラインアップについて説明した。

 AMDによると、PCの使い方としては「プロダクティビティー」「マルチメディア」「ゲーム」がある。このうちプロダクティビティーに属する「Word」や「Excel」といったビジネスアプリケーションは、現行のどんなPCでも問題無く使えるため、特別に高い性能は必要無い。一方、マルチメディアやゲームには、依然として高い性能が必要で、現行のAMDのラインアップは主にその2つの用途に合わせて設計しているとした。

 FXシリーズは、最高の性能を持つ個人用PC向け。性能の高いグラフィックス機能を内蔵したAシリーズは、大型の液晶ディスプレイを備えたスタイリッシュなPC向け。家族で使うことも想定している。低消費電力指向のEシリーズは、テレビの下に置いて使う小型で安価なメディアプレーヤーのような用途に向いている。各種の調査に基づき、PCに何が必要かを考え抜いた結果として、2011年にこうしたラインアップを組んだとした。

「VISION」ロゴが示す領域が、それぞれのジャンルをカバーしているCPUを示している。上からFXシリーズ、Aシリーズ、Eシリーズだ。
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AMDは、世界中で4億7000万人以上がPCゲームを楽しんでいるとし、ゲームにはCPUの性能があまり関係無く、グラフィックスチップの性能が大きく影響するという結果を示した。自社の強力なグラフィックスチップにより、良好なゲームの体験をユーザーに提供できるとアピールしていたが、一方でAMDは「FXシリーズはゲームに最適」とも主張している。
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