EMCジャパンでテクニカル・コンサルティング本部プロダクト・ソリューションズ部マネジャーを務める竹内博史氏
EMCジャパンでテクニカル・コンサルティング本部プロダクト・ソリューションズ部マネジャーを務める竹内博史氏
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 EMCジャパンは2011年11月29日、Webアクセス(HTTP)経由でファイルにアクセスするストレージ機器「Atmos 2.0」を出荷した。複数のサイトをまたがってストレージ容量を拡張したり、オンラインストレージ事業を提供するユーザーなどに適する。価格は、個別見積もり。

 Atmosは、HTTPベースのAPI(RESTまたはSOAP)を介して利用できる、ファイル格納用途のストレージ機器である。容易なスケールアウトが可能で、Atmosのサーバー台数を増やしていくと、性能を落とすことなくストレージ容量を拡張できる。HTTPでアクセスできれば利用できるため、複数サイトにまたがってストレージ空間を拡張できる。いずれはAmazon S3互換のAPIも提供する(現在ではベータ版での提供)。

 HTTP APIで使える利点について、EMCジャパンの竹内博史氏(写真)は「NASのようにサーバーからマウントする必要がなく、ストレージとサーバーの関係が疎結合で済む」と説明する。また、スケールアウトでストレージを拡張する際にも、スケールアウト型NAS製品のようにローカル拠点の内部でInfiniBandや10Gビットイーサネットで接続する必要がなく、WANを介して広域へと拡張できる。

データはサーバーごとに分散配置、サーバーは負荷分散環境で使う

 Atmosのハードウエア構成は、複数台のPCサーバー機(1Uラックマウント)と、個々のPCサーバー機とSAS経由で直結したディスクストレージ(JBOD)から成る。これらをラックに搭載した形態をとる。PCサーバー機上では、HTTPベースでファイルストレージ機能を提供する専用のWebアプリケーションが動作する。一般には、これらのPCサーバーに負荷分散装置を介してアクセスする。

 個々のPCサーバー同士は、独立したストレージシステムであり、データを共有していない。つまり、個々のPCサーバーがローカルストレージ(JBOD)に格納したファイルデータには、そのPCサーバーだけがアクセスできる。一方、どのPCサーバーがどのファイルデータを持っているのかという情報は、全PCサーバーが共有して持つ。あるPCサーバーにアクセスした際に、別のPCサーバー上にファイルがある場合は、別のPCサーバーからファイルを転送して返す。

 データの保護性を高めるため、PCサーバー間でデータを複製する機能を備える。ファイルを複数に分割してパリティ情報を付け、複数のPCサーバーに分散保存できる。遠隔サイトにリモートコピーを作成することも可能だ。これらは、ファイルごとにデータ保護のポリシーを設定して使い分けられる。

 標準のハードウエア構成に応じて、3モデルを用意した。ラック当たり240Tバイト(ディスク120台)、480Tバイト(240台)、720Tバイト(360台)で、それぞれ性格が異なる。例えば、720Tバイトのモデルは、PCサーバー1台あたり60台のディスクを搭載しており、アクセス性能よりも容量を重視している。また、ハードウエアアプライアンスのほかに、仮想アプライアンス版(VMware)も用意している。

Atmosを利用しやすくするオプションを用意

 オプションとして、いくつかのソフトウエアやハードウエアを用意している。

 (1)「Atmos GeoDrive」(無償)は、Windows/Linux向けの専用クライアントソフトである。同ソフトを動作させることで、AtmosのストレージをOSの仮想ドライブとしてマッピングできる。これにより、OSからはAtmosをローカルのファイルシステムのように利用できる。

 (2)「Cloud Tiering Appliance」(旧称はRainfinity FMA)は、NASのデータをほかのNASやAtmosへとマイグレーションする装置である。NASのリプレースや集約/統合のほか、ILM(階層型ストレージ管理)による、使用頻度の少ないデータの自動アーカイブができる。元々はAtmosとは無関係の製品だったが、2011年9月に出荷した新版からAtmosにデータを格納できるようにした。

 (3)「Atmos Cloud Delivery Platform」は、課金管理アプリケーションである。Atmosを複数部署や複数会社のマルチテナント構成で利用する際に、利用状況に応じて課金できるようにする。