「ソーシャルメディアトークライブ」に登壇した京都大学客員准教授の瀧本哲史氏(左)、αブロガーの小飼弾氏(中)、エイベック研究所代表取締役の武田隆氏(右)
「ソーシャルメディアトークライブ」に登壇した京都大学客員准教授の瀧本哲史氏(左)、αブロガーの小飼弾氏(中)、エイベック研究所代表取締役の武田隆氏(右)
[画像のクリックで拡大表示]

 2011年11月27日、ニフティが運営するライブハウス「TOKYO CULTURE CULTURE」で「ソーシャルメディアトークライブ」と題したパネルディスカッションが開催された。登壇したのは著名なブロガーでオープンソース開発者の小飼弾氏、エンジェル投資家であり「僕は君たちに武器を配りたい」「武器としての決断思考」の著者でもある京都大学客員准教授の瀧本哲史氏、「ソーシャルメディア進化論」の著者でエイベック研究所代表取締役の武田隆氏の3人である(写真1)。進行は瀧本氏が担当した。話題は匿名と実名、企業でのソーシャルメディア活用などに及んだ。

TLを自分の世界だと思い込んでいる人は少なくない

 最初は匿名・実名についての話題が展開された。小飼氏は、「レスポンスが成立しないのが匿名。責任の第一歩は何か来たときに返事をすること。匿名はそれが誰によってなされているか分からないので返事ができない、ということ」であると指摘。武田氏は「実名、匿名と別名がある」とし、ソーシャルメディアでは、この匿名と別名が混同されているという。別名は「リアルの自分とは違うアイデンティティを持っている」(小飼氏)ものであり、レスポンスが成立する以上、匿名とは違う存在となる。

 こうしたなかで、プライベートな空間とパブリックな空間を考えたときTwitterについて、小飼氏は「誤解しやすい構造で、自分のTL(タイムライン)を自分の世界だと思い込んでいる人が少なくない」と述べる。もちろん仲間内だけで閉じたコミュニケーションをするための機能もあるが、基本的にはTwitterでのツイートは誰でにもオープンであるのが前提である。小飼氏は、「ある程度安心して話をしていいところだという幻想を抱かないと言いたいことは言えない。その意味でTwitterは自分を“だます”仕組みがよくできている」と語る。その一方で、前述のように「自分の世界だと思い込んでいる」誤解が、時に「カンニングした」などのツイートが発覚し”炎上”する原因にもなっているという。

商品の感想を述べてレスポンスを得ると“我が事化”

 進行役の瀧本氏がFacebookの企業利用に水を向けると、武田氏は、企業が顧客とソーシャルメディアを介してコミュニケーションするとき、「企業の担当者は、ある程度自分をさらけだして、それぞれのネットワークとつながっていくことになる。それが24時間365日、その企業を代表することになり、それは難しいことである」と述べる。それを受けて小飼氏は、「ソーシャルネットワークでうまくやっている企業は、組織の長がやっている」と述べ、「『ソーシャルメディアの担当者を付けろ』という前に、まず企業を代表する社長なりがやってみること」と説く。また、一方で、こうしたコミュニケーションのために個人と切り離した「別名」があると述べる。

 武田氏は企業がソーシャルメディアを活用する例として、オンラインのグループインタビューを挙げる。武田氏がかかわったグループインタビューでは、「96%がもう一度この調査に参加したいと答えている。本音が出せたという喜びがあり、その企業を通して社会とつながったと実感している」と述べる。武田氏は、こうした企業と個人の双方向の対話が行われることで、“我が事化”が進み、商品なり企業なりと顧客がつながっていくと説明する。個人がソーシャルメディアを介して、「商品の感想などを出して、その商品に関与する。そしてその商品を出している企業からレスポンスをもらう。そうするとその製品がその感想を出した人にとって“我が事化”されて、輝いて見える」(武田氏)。

 最後に瀧本氏が今後1-2年のSNSの動向について問いかけたところ、小飼氏は「確実に起こる重要なイベントとしてFacebookの株式公開」を挙げた。「これだけ世の中のために重要なサービスを提供しながら、当然受けなければいけない監視を受けていなかった。まずFacebookにもパブリックカンパニーになってもらいたい」(小飼氏)と注文を付けた。