写真●クアルコム ヨーロピアン・イノベーション部門エグゼクティブバイスプレジデントのアンドリュー・ギルバート氏
写真●クアルコム ヨーロピアン・イノベーション部門エグゼクティブバイスプレジデントのアンドリュー・ギルバート氏
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 クアルコムジャパンは2011年11月22日、電気自動車(EV)向けワイヤレス給電技術について、同社の取り組みを紹介する説明会を開催した。ワイヤレス給電とは、非接触・無接点で電力を機器に供給するシステムのこと。充電ケーブルが不要、充電コネクターの接触不良を心配しなくて済む、といったメリットがある。

 説明役を務めたヨーロピアン・イノベーション部門エグゼクティブバイスプレジデントのアンドリュー・ギルバート氏(写真)によれば、ワイヤレス給電技術をライセンスベースで提供していく事業モデルを考えているという。「これでワイヤレス給電システムの市場に競争が生まれ、選択肢が広がり、価格が下がるといった状況を生み出したい」(ギルバート氏)とした。

 今回の説明会では技術の詳細を明かさなかったが、クアルコムは今月、ニュージーランドのベンチャー企業であるHaloIPTを特許ごと買収。HaloIPTが開発した「電磁誘導」方式の技術がベースになる。電磁誘導方式は既に電動歯ブラシやコードレス電話の子機などで実用化されており、最近ではNTTドコモが「おくだけ充電」という名称でスマートフォンに適用している。ただしこうした機器の給電能力はたかだか5W程度だが、EV向けのワイヤレス給電では3kW、7kW、18kWという高出力と、単相、二相、三相に対応する必要があり、「いずれもフィールドで実証済み」(ギルバート氏)という。

 またワイヤレス給電システムの使い勝手を大きく左右する要因として、位置決めの問題がある。道路などに埋め込む送電用パッドと、EVに内蔵する受電用パッドの位置があっていないと、電力効率が低下するからだ。クアルコムのワイヤレス給電システムでは「マグネティックアライメント」と呼ぶ独自の技術を使い、駐車位置が多少ずれても90%を超える送電効率を維持できるようにしているという。位置あわせには送電用パッドを動かして受電用パッドに合わせる方式もあるが、クアルコムの方式はパッドを動かさず、発生する磁束の方向を変えることで、位置あわせを実現しているという。

 このほか同社が参画する英国ロンドンのトライアルなどの紹介があった。最大2年、50台のEVを使って、ワイヤレス給電の実用化に向けた課題を洗い出すという。ギルバート氏は「EVのいい環境がある日本でもチャレンジしたい」としたが、具体的なトライアルについては未定とした。