UQコミュニケーションズは2011年11月21日、モバイルWiMAX方式の通信サービス「UQ WiMAX」のサービスエリアを、地下鉄のトンネル内に拡充すると発表した。都営地下鉄三田線の一部区間で同年12月にサービスを開始し、2012年末にかけて都営地下鉄の全路線に拡充する。地下空間における通信サービスとしては、地下鉄の駅や地下街に携帯電話や公衆無線LANのアンテナを設置する例は増えているが、地下鉄のトンネル内に設置して走行中の列車内でも通信可能にする例は珍しい。

 都営三田線の日比谷・大手町・神保町の3駅において、駅構内と駅の前後のトンネル区間をカバーするアンテナの設置工事を11月28日に始める。このうち大手町駅は12月末にサービス開始予定。その後、都営三田線のほかの区間や都営浅草線、都営新宿線、都営大江戸線の各駅でも同様にアンテナを順次設置していく。都営地下鉄へのアンテナ設置は、2012年12月末をめどに完了することを目指す。東京メトロや大阪市営地下鉄などにおいても、UQと各事業者との間で交渉を進めているとする。

駅ホームからトンネルに向け電波を発射、「直線なら1kmくらい届く」

 一般に地下鉄のトンネル内へのアンテナ設置は、設置や保守の作業ができる時間帯が深夜の3時間程度に限られるなどの制約があり難しい。そこでUQは、駅のホームの両端に、指向性の高いアンテナをトンネル内に向けて設置した。UQ WiMAXが使用している周波数帯域は2.5GHz帯と比較的高く直進性が高いことから、「カーブのないトンネルであれば駅から1kmくらいは電波を飛ばせる」(UQコミュニケーションズ 代表取締役社長の野坂章雄氏)。

 一方、カーブの多い区間では駅から電波を発射してもカーブの手前までしか届かず、トンネル内に圏外の地点が残る可能性がある。これについては「そういう場所もあるだろうが、今回はあくまで手間を掛けずにアンテナを設置し、早期にトンネル内でモバイルWiMAXを使えるようにすることを目指した。今後、トンネル内にアンテナを設置することも検討していきたい」(野坂社長)としている。

 地下鉄に通信サービスのアンテナを設置する場合、携帯事業者各社が共同で運営する「移動通信基盤整備協会」(通称トンネル協会)を通じて、共用のアンテナを設置・管理する仕組みが一般的だが、今回は「協会の了承を得た上で、設置・運用ともUQが担う」(野坂社長)という。

「役場カバーではなく実人口カバーで80%」を目指す

 UQは地下鉄以外でのエリア拡充を進める。これまで手薄だった地方において基地局を新設するほか、既にサービスエリアとなっている場所でも、電波強度が比較的弱い地点がある場合は順次基地局を増設して高速通信を可能にする。

 同社によると、2011年11月時点での「実人口カバー」は9600万人で、これを2012年3月末までに1億人に引き上げるとしている。一般に、携帯電話の人口カバー率を算出する場合、市町村の役所・役場がサービスエリアになっていれば、その市町村の全域をカバーしているとみなすのが慣例になっているが、「“役場カバー”ではなく実際にユーザーが利用できるという意味のカバーで1億人を目指す。1億人をカバーできれば、実人口カバー率は80%になる」(野坂社長)としている。