写真1●シマンテックでシステムエンジニアリング本部ストレージ&クラスタ製品担当技術部長を務める星野隆義氏
写真1●シマンテックでシステムエンジニアリング本部ストレージ&クラスタ製品担当技術部長を務める星野隆義氏
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 シマンテックは2011年11月18日、同社が2011年内に発表・出荷を予定する高可用性(HA)クラスタリングソフトの新版「Veritas Cluster Server 6.0」について、記者向けの説明会を開催した(写真1)。その中で、システム障害のリアルタイム検知など、復旧までの時間を短縮する三つの新機能を明らかにした。

 冒頭、シマンテックでストレージ&クラスタ製品担当の技術部長を務める星野隆義氏は、仮想化環境の可用性が以前よりも重要性を増している点を指摘した。理由は、2010年以降、ミッションクリティカルな用途で仮想化が使われるようになったためである。現在では、仮想化されたアプリケーションの32%がクリティカルな用途という。

 こうした状況の下、高可用性クラスタソフトには、以前よりも短時間でシステム障害を検知し、復旧することが求められる。さらに、サーバー仮想化ソフトの機能を補完するなど、仮想化環境と組み合わせた際の相性も重要になる。シマンテックでは今回、これらの三つの機能強化を、HAクラスタソフトの新版に施した。

(1)検知速度を30倍高速に、プロセス障害をリアルタイム検知

 一つ目の強化点は、Veritas Cluster Serverにおいて、カーネルレベルでリアルタイムにプロセスの障害を検知できるようにしたことである。同社は、この機能をIMF(インテリジェント・モニタリング・フレームワーク)と呼ぶ。プロセスのステータスを常時監視することで、ほぼリアルタイムに近いかたちでアプリケーションサービスの障害を検知できる。

 従来、同社のVeritas Cluster Serverでは、ネットワークを介した応答のポーリング監視や、プロセス状態を調べるコマンドの逐次実行といった、外部からの定期的な監視方法しかとれなかった。監視のための負荷が大きいため、通常は1分(60秒)に1回の間隔で監視するよりほかなかった。このため、アプリケーションの停止から検知までに数秒から1分の時間がかかっていた。

(2)数秒でデータを引き継げるように、NTFSと連携

 二つ目の強化点は、Veritas Cluster Serverにおいて、待機系のサーバーが迅速に処理を引き継げるように、ストレージデータを本番系と待機系で常時共有するようにしたことである。待機系からRO(読み出し専用)でマウントしておき、本番系のストレージ利用状況を常時監視しつつ、システムを引き継ぐ際にRW(読み書き可能)に切り替える。これは数秒で切り替わる。

 なお、この機能はUNIX版とLinux版では以前から実現できていたが、Windows版(NTFS環境)では実現できていなかった。このため、データ量やストレージ構成にもよるが、待機系のサーバーがデータを読み書きできるようになるまで1~2分程度の時間がかかっていた。今回の新版では、Windowsでも同機能を利用できるようにした。

(3)KVMとHyper-Vの可用性をVMware並みに機能補完

 三つ目の強化点は、Veritas Cluster Serverと、ファイルシステム関連ソフトの「Veritas Storage Foundation」を同時に使った際に、サーバー仮想化ソフトのKVMとHyper-Vを補完して、VMware相当に可用性を高められるようにしたことである。具体的には、KVMにおいて仮想サーバーのHA機能を実現できるようにしたほか、Hyper-Vにおいてシステム停止を伴わずにストレージを拡張できるようにした。

 KVMでは、管理領域(ドメイン0)に同ソフトをインストールすることで、KVM管理下の仮想サーバーをHA構成で利用できるようにした。本来はHA機能を持たないKVMに対して、VMware HA相当の機能を提供する。また、アプリケーション単位の障害を検知・復旧するソフト「Symantec ApplicationHA」をドメイン0に導入し、サーバーの復旧と連携させることができる。これにより、サービスを起動する順番などを制御できる。