SAPジャパンは2011年11月17日、ERP(統合基幹業務システム)パッケージ「SAP ERP」を含む同社のスイート製品「SAP Business Suite(BS)」に対する機能拡張用ソフトの最新版を提供すると発表した。機能拡張用ソフトは「SAP enhancement package(EHP)」と呼ぶ。独SAPはSAP ERPやSAP BSを当面バージョンアップしない代わりに、年に1回程度、EHPを提供することで機能強化を実施している。最新版のEHPのバージョンは、SAP ERP向けは「EHP6」、BSに含まれるほかの業務パッケージ向けは「EHP2」となる。

 最新版のEHPは、SAP BSの最新版「SAP BS7」の機能を拡張する。SAP BS7に含まれるのはERPパッケージ「SAP ERP 6.0」のほかに、CRM(顧客関係管理)、PLM(製品ライフサイクル管理)、SCM(サプライチェーン管理)、SRM(サプライヤー管理)など業務アプリケーションの最新版だ。最新版のEHPには、パートナーとともに需給計画を立案できる機能といった業務支援機能のほか、業種別の機能や、日本企業向けに特化した機能が含まれている。

 業種別機能の代表例が、電力や交通量などをITで管理するスマートシティを実現するための機能だ。電力の利用量などのデータを自動的に送受信するスマートメーターの管理機能を実現する。SAP ERPが標準で備える公共向けメーター管理機能「SAP Advanced Metering Infrastructure(AMI) for Utility」と、家の消費電力などを制御する「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」といったシステムを連携するための機能などを、EHPで提供する。

 日本企業向けに特化した機能としては、人事モジュールに対して提供する団体扱い生命保険/損害保険のデータ交換プロセス向けの機能や、新償却資産税に対するレポートの機能拡張などを備える。

 EHPは、SAP ERPやSAP BSの保守費用を支払っている顧客に対しては原則、無償で提供する。ただし「機能によってはERPなどの追加ライセンス費用が必要になるケースもある」(SAPジャパンソリューション&カスタマーイノベーションセンターの松村浩史センター長)という。

 独SAPは11年10月に、これまで15年12月までとしていたBS7の保守期限を20年12月まで5年間延ばすと発表した(関連記事:SAPがERP製品の保守期間を延長、2020年12月まで標準サポート)。併せて、製品の保守方針も変更。これまでEHPによる年1回の提供が基本だったが、今後はEHPに加えて、より細分化した機能を四半期に1回の頻度で提供するとした。この二つの施策により、「顧客企業が長期的な見通しを持って、混乱なくイノベーションを得られるようになる」とソリューション統括本部の脇阪順雄本部長は説明する。