金融庁や中小企業庁などは2011年11月8日、中小企業が利用することを目的とした会計処理の指針「中小企業の会計に関する基本要領(案)」を公表した。中小企業が会社法上の計算書類などを作成する際に参考にできる会計処理や注記をまとめた文書だ。「安定的に継続利用を可能なものにするとの観点から、IFRS(国際会計基準)の影響を受けないものとする」としている。12月7日までパブリックコメントを受け付ける

 基本要領の対象として想定しているのは、金融商品取引法の適用対象会社以外の企業と、会社法上の会計監査人設置会社以外の企業。株式会社だけでなく、特例有限会社や合名会社、合資会社も利用できるとしている。約30ページで「収益、費用の基本的な会計処理」「有価証券」「固定資産」「引当金」など14項目の会計処理を例示。貸借対照表や損益計算書、株主資本変動計算書などの様式集も付属している。

 基本要領を公表した背景には、企業の会計基準を策定する民間団体であるASBJ(企業会計基準委員会)などが設置した「非上場企業の会計基準に関する懇談会」が10年8月に公表した報告書や、中小企業庁が設置した「中小企業の会計に関する研究会」が同年9月に公表した中間報告書の存在がある。両報告書では「実態に即した新たな中小企業の会計処理のあり方を示すものを取りまとめるべき」との意見を提示した。

 今回の基本要領は、金融庁と中小企業庁に加えて、日本商工会議所やASBJが連名で公表した。作成したのは、金融庁と中小企業庁が合同で事務局を務めた「中小企業の会計に関する検討会」である。検討会には、商工会議所などの業界団体の代表者や大学教授に加え、銀行や信用金庫などの金融機関、公認会計士や税理士、企業の監査役などが参加している。