東京証券取引所の鈴木義伯 専務取締役兼最高情報責任者(CIO)は2011年11月9日、千葉県の「CIOサミット」で講演し、東証が進めるシステムと業務改革について語った。

 鈴木CIOは「証券取引所の魅力はかつて上場企業数や時価総額だったが、今では取引の高速性や安定性に変わっている」と指摘、取引の高速化への注力を強調した。

 鈴木氏は2006年、東証のシステムトラブルを受けて、NTTグループから招かれた異色の経歴を持つ。就任後、システム改善に取り組み「注文へのレスポンスをかつての10ミリ秒から2ミリ秒にした」と成果を語った。一方で、欧米の取引所では100マイクロ秒の例もあり「世界は先を進んでいる」とも指摘し、魅力を高めるためにさらなる短縮を目指すと語った。

 一方で、東証内の情報系システムの効率性も高める。東証内では株式や上場管理など部署ごとにシステムを構築したため「部分最適を追求してきており、全体最適に欠けている。1カ所変更しようとするとそれぞれを調整しなくてはいけない状態にある」という。そのため運営コストが上昇して、ここ数年で35億円から45億円まで増えた。そこで鈴木CIOは自ら業務革新の旗振り役となり「すべて変えるつもりでコストを減らす。縦割りの組織に横串を通す」と語った。

 世界の証券取引所を見渡すと国境を超えた合併が続いていることに加えて、高速取引や専門取引を掲げた私設取引システムも台頭し、先端のITと金融取引を組み合わせるビジネスとなっている。一方で、日本では地方証券取引所の再編も進まないうえに、“お役所体質”も指摘され、平均株価の低迷に伴い市場としての魅力が薄れていると言える。

 そのような中で東京証券取引所が大阪証券取引所との合併交渉を進めていることが報じられたが、鈴木CIOは公演後、合併交渉について「何もない」と強調し、「何も話さない」と語った。