写真1●説明するイー・アクセスのエリック・ガン社長
写真1●説明するイー・アクセスのエリック・ガン社長
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写真2●イー・アクセスの審査基準に対する意見
写真2●イー・アクセスの審査基準に対する意見
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 イー・アクセスは2011年11月4日、2011年度第2四半期の決算説明会を開催した。同社社長のエリック・ガン氏は決算の説明(2011年度上期、売上高966億円、営業利益134億円)に加え、同日発表した2012年3月開始予定のLTEサービス(関連記事)に言及(写真1)。さらに、新たに割り当て予定の900MHz帯の審査基準について、ソフトバンクの主張に反論した。

 LTEサービスについては、2012年3月にサービスを開始し、2013年3月期中にLTE人口カバー率を70%に拡大する方針を示した。イー・アクセスは1.7GHz帯の15MHz×2の周波数を持っており、基地局によって10MHz×2または5MHz×2をLTEサービス用に割り当てる予定という。

下り最大112Mbpsのサービスを構想

 ガン氏はまた、下り最大75Mbpsのサービス開始後に、75Mbpsの1.5倍になる下り最大112Mbpsのデータ通信サービスを提供する構想を明らかにした。これは現在総務省で検討中である1.7GHz帯の5MHz×2がイー・アクセスに割り当てられることを前提としている。ガン氏は、「常に最速サービスのイー・アクセスというブランドを保ちたい」と説明した。

 なお、下り最大75Mbpsは10MHz×2を利用する場合であり、5MHz×2をLTEに使う基地局付近では75Mbpsよりも最大速度は落ちる。10MHz×2を割り当てない理由は、一部基地局ではDC-HSDPAという方式ですでに10MHz×2を使い、下り最大42Mbpsの通信サービスを提供しているためという。

 イー・アクセスはDC-HSDPAを都心など主要エリアで採用している。LTEサービスを都心で展開する場合、イー・アクセスは基地局ごとにDC-HSDPAかLTEかの選択を迫られる可能性が出てくる。この点についてイー・アクセスの阿部基成副社長は、「基地局単位ではDC-HSDPAからLTEに置き換えるところもあるかもしれないが、エリアが狭くなるというわけではない。基地局がカバーするエリアを調整して既存のユーザーに迷惑をかけることはないようにする」と述べた。

900MHz帯割り当ては「割り当て周波数の少ない事業者を優先すべき」

 総務省は900MHz帯割り当ての比較審査基準に、(1)上限2100億円の移行費用負担額の多寡、(2)割り当てから7年後の年度末におけるLTEサービスの人口カバー率の大きさ、(3)すでに各事業者に割り当てられている周波数帯の差異や、周波数幅に対する契約者数の程度、移行促進計画の充実度、MVNO計画の充実度など、の3点を挙げている。(1)の基準で各事業者を比較して、1事業者にならなければ(2)の基準で再度ふるいにかけるといった流れになる。

 この比較審査基準についてガン氏は、「(1)の上限2100億円は出せる。(2)の人口カバー率も問題ない。(1)と(2)では勝負はつかないのでは」と発言し、(3)の基準を満たせるかどうかが勝敗を分けると考えていることをうかがわせた。

 重要になる(3)の中の「周波数帯の差異」については、「割り当て周波数の少ない事業者を優先すべき」とし、「周波数幅に対する契約者数の程度」という基準については、「基準があいまいである。さらに周波数幅に対する契約者数の程度という基準だとイー・アクセスは不利になる。契約者数の伸び率を考慮してほしい」と述べた。こうした意見は、総務省が現在募集しているパブリックコメントを通じて提出するとした(写真2)。

 質疑応答が終わった説明会の最後に、それまで黙っていた千本倖生会長が900MHz帯割り当てについて発言した。千本氏は、「ソフトバンクが記者会見において、あたかも900MHz帯割り当てが決まったかのように発言し、すでに基地局の工事に着手したと言っている。しかし工事の着手が審査に影響を及ぼさないことは総務省に確認した」と述べた。

 さらに「ソフトバンクは、もし900MHz帯が獲得できなければ国に損害賠償を請求すると言っているが、これは国に対する脅しのようなもので、とんでもない話である」「同時にイー・アクセスに対して、データ通信サービス中心の企業だから900MHz帯は必要ないとも言っている。これは明らかな誤りで、当社は900MHz帯をデータ通信に加えて通話もできるスマートフォンに使っていく方針だ。データ通信の会社だという発言には、iPhoneがつながらないから900MHz帯が使いたいのでは、と反論したくなる。甚だ遺憾だ」とし、ソフトバンク社長の孫正義氏による2011年度第2四半期決算説明会での発言に対して反論した。