設備工事会社の新菱冷熱工業は2011年11月4日、国際標準の「IEEE1888」に準拠したビルのエネルギー管理システムを開発し、自社内に導入・運用を開始したと発表した。広域にまたがる複数のビルを対象に、それぞれが導入する空調や照明機器のメーカーが異なっても一元管理できるのが特徴で、スマートフォンなどを使って最新状況を確認することもできる。IEEE1888を使って、実際に利用されている複数のビルのエネルギー管理するのは、これが初めてという。

 新システムは、同社製のビルや地域冷暖房プラントの中央監視システム「sc-brain」をベースに機能拡張した。具体的には、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が定めるXMLベースの通信プロトコル「BACnet/WS」と、XML標準化団体OASYSが定めた設備向けプロトコル「oBIX」を組み込むとともに、設備データの収集・蓄積を可能にするWebサービス用プロトコルの国際標準規格であるIEEE1888に対応した。

 BACnet/WSとoBIXに対応することで、設備が設置されている既存ビルを含め、Webサービスによる連携を実現。IEEE1888に対応することで、これらのXMLデータを一元的に管理・蓄積できるようになる。IEEE1888は、東京大学の江崎浩教授が主催する「東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)」が策定した「FIAP(Facility Information Access Protocol)」が2011年2月に国際標準化されたものだ。

 新菱冷熱工業はこの仕組みを、東京・四ッ谷にある本社ビルと第7新菱ビル、および茨城県つくば市にある中央研究所に導入。インターネット経由で設備データを本社内のFIAPストレージに蓄積している。蓄積したデータはPCのほか、スマートフォンからも閲覧できる。

 新システム導入に向けては、築40年を経た本社ビルをリニューアルし、32%の省エネを図っている。建築環境総合性能氷塊システムのCASBEE改修Sクラスを取得した。

 東京大学の江崎教授は、新菱冷熱の取り組みについて、「GUTPにとっても先駆的な取り組みだ。複数ビルにまたがる管理は、省エネ対策だけでなく、エネルギーのリスク管理の視点からも重要である」と評している。

 資料冷熱工業は今後、「自社での運用ノウハウなどを武器に、複数ビルのエネルギー管理や省エネ支援などの事業拡大を図る」(計装エンジニアリング事業部長の阿部靖則執行役員)計画だ。