今回の標的型攻撃でウイルスに感染したとみられるパソコンの地域別台数(米シマンテックの情報)
今回の標的型攻撃でウイルスに感染したとみられるパソコンの地域別台数(米シマンテックの情報)
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 米シマンテックは2011年10月31日、2011年7月から9月にかけて、世界中の化学メーカーを狙った標的型攻撃が相次いだことを明らかにした。少なくとも48社が攻撃を受けたという。今回の攻撃でウイルスに感染したとみられるパソコンは、日本にも存在する。

 標的型攻撃とは、特定の企業や組織を狙った攻撃。標的型攻撃の多くでは、ウイルス添付メールが使われる。攻撃者は、標的とした企業・組織の従業員にウイルス添付メールを送信し、“言葉巧み”にウイルスを実行させる。具体的には、メールの送信者や件名などを偽装するとともに、添付したウイルスを有用なファイルに見せかける。

 2005年以降、世界中で確認されており、2011年になると国内でも頻発。警察庁によると、2011年4月から9月までの半年間で、およそ890件の標的型メール(標的型攻撃のメール)が確認されているという。

 9月下旬には三菱重工業などの防衛関連企業が、10月下旬には衆議院や外務省、在外公館が標的になったことが明らかになっている。

 今回シマンテックが報告したのは、主に化学メーカーを狙った標的型攻撃。7月から9月中旬までに、世界中の化学メーカー29社、その他の企業19社の計48社を狙った標的型攻撃が確認されたという。「その他の企業」の多くは、防衛関連企業だった。

 今回の攻撃で使われたウイルスは、感染するとパソコンを乗っ取る。特定のサーバーに接続し、攻撃者からの命令を待ち受ける。そして、命令に従って情報を盗んだり、別のウイルスをダウンロードしたりする。

 攻撃者の主な目的は、企業の知的財産を盗むこと。いわゆる産業スパイだ。ウイルスに感染したパソコンだけではなく、ネットワーク上の別のパソコンやサーバーにもアクセスし、重要な情報を盗み出す。

 同社では、ウイルスの“司令塔”となるサーバーを特定し、ウイルスからの接続を監視した。その結果、ここ2週間で同サーバーにアクセスしたIPアドレスは101件。つまり、101台のパソコンが、今回の標的型攻撃によって、現在でもウイルスに感染している可能性がある。

 IPアドレスから、ウイルス感染パソコンは20の国と地域に存在することが明らかとなった(図)。最も多いのは米国で27台。次いで、バングラデシュの20台、英国の14台。日本にも、感染パソコンが1台存在する。

 通常、標的型攻撃では、1つの企業・組織に送信される標的型メールの数はそれほど多くない。怪しまれないようにするためだ。しかしながら今回の攻撃では、ある企業に対してはおよそ500通の標的型メールが送られたという。また、別の2つの企業には、100通以上の標的型メールが送信されている。