グローバルでシステムを標準化する際、「日本発」の標準を全世界に展開する企業は今後、大幅に減っていく---。

 調査/コンサルティング会社のアイ・ティ・アール(ITR)はユーザー企業のICTガバナンスに関して、こうした調査結果をまとめた。これまで日本企業は海外進出に当たって、国内のアプリケーションやシステム構築手法をそのまま持っていくのが一般的だったが、海外市場の比重が高まるにつれてICTガバナンスの在り方が変化しつつあるようだ。

 この調査は2011年10月初旬、グローバル展開を実施または検討しているユーザー企業の情報システム担当者に対してインターネット上で実施し、500件の有効回答を得たアンケート結果をまとめたもの。グローバルでのシステム標準化への取り組みの現状を尋ねたところ、「日本の要求水準を全世界に展開する」との回答が最も多く、全体の45.2%を占めた。しかし今後の方針を尋ねると、この比率は21.8%まで低下する(図1)。

図1●グローバルでのシステム標準化の基本方針
図1●グローバルでのシステム標準化の基本方針

 代わって台頭するのは「海外で標準とされる環境を日本を含めた全世界に展開する」という手法。現状では15.0%に過ぎないが、今後は29.8%で選択肢の中で最も多くなる。

 別の設問で、グローバルICTガバナンスの基本方針を尋ねたところ、日本の役割は相対的に低下することもわかった。日本国内(本社)から全世界の情報システムを統括・管理している企業の比率は、現在は全体の53.4%だが、今後は37.6%に低下する。

 調査を担当したITRの舘野真人シニア・アナリストは、今回の調査結果を「グローバル展開の目的が生産拠点の確保から現地市場の獲得に移っていることの表れ」と分析する。

 ITRは今回の調査結果を NTTコミュニケーションズが2011年10月27~28日に都内で開催したプライベートイベント内で発表した。28日には、この調査結果を基に、主要IT関連メディアの代表者による討論会も催された。