写真1●ソフトバンクの孫正義社長
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写真2●純利益でもKDDIを抜いたとアピール
写真2●純利益でもKDDIを抜いたとアピール
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 ソフトバンクは2011年10月27日、2011年4~9月期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比4.8%増の1兆5356億4700円、営業利益は同18.3%増の3732億2300万円と増収増益となった。営業利益は6期連続の過去最高益更新となる。純利益は同182.7%増となる2172億5200万円であり、こちらも過去最高を記録した。同社の孫正義社長(写真1)は「営業利益に加えて、今期初めて純利益でも1401億円のKDDIを逆転した。あと何年かで営業利益でドコモを超えてみせる」(写真2)と発言するなど、好調な決算内容に口も滑らかだった。

 孫社長の口が滑らかだったのは、「いつも心のどこかに暗雲があった」というライバル会社からのiPhone販売開始という事態を、なんとか乗り切ったからかもしれない。孫社長は、KDDIからのiPhone 4Sの発売開始について「モバイル参入以来、最大の危機」と捉えていたと正直に話す。「もしかしたら100万契約単位の相当な解約の嵐がくるかもしれない」(孫社長)と背筋がぞっとしたという(写真3)。

写真3●孫社長がぞっとしたという量販店でのiPhone 4Sの購入希望調査。KDDIのほうが群を抜いて希望が多い
写真3●孫社長がぞっとしたという量販店でのiPhone 4Sの購入希望調査
KDDIのほうが群を抜いて希望が多い。
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 だが実際、発売を開始してみると、iPhone 4Sは過去最高の予約数で、iPhone 4と比べても数百%の伸びを示したという。「旧機種からの無償乗り換えキャンペーンの実施や、地道にユーザー宅の電波環境の改善に力を入れたことが効いたのかもしれない。暗雲は去り霧が晴れた、というのが正直な感想」と孫社長は話す。

 とはいえ孫社長は、まだまだ快適とは言えない無線インフラがソフトバンクの弱点であると認める。「通常の端末よりも10~20倍のトラフィックを発生させるスマートフォンを日本で最も抱えているのはソフトバンク。一番周波数がひっ迫しているため、900MHz帯は当然我々がもらえると信じている」(孫社長)と、総務省が先日開設指針案を公表した900MHz帯の割り当てについて(関連記事)、是が非でも手に入れたい考えを示した。

 同社は900MHz帯の許認可を受けた場合、同帯域が使用可能になる2012年夏に即サービスを開始できるよう、「フライング寸前の状態で待ち望んでいる」(孫社長)という。既に鉄塔の新設を開始し、基地局用の機材や工事人の手配も「リスクをとってかなり発注した」(孫社長)。仮に900MHz帯を入手できなくなった場合、損失が出る形だが、「その場合は、総務省を訴訟する」(孫社長)と、冗談とも本気ともつかない言葉を返す。通常は認可から1年~1年半かかってサービスが開始するのが一般的だが、そのタイムロスを無くし、リスクを取りつつ、サービスの垂直立ち上げしたい構えのようだ。

 なお日経コミュニケ―ションのインタビューに答えたソフトバンクモバイルの宮川潤一取締役専務執行役員兼CTOは、900MHz帯を獲得できた場合、冗長化の狙いもあり、北海道から九州まで900MHz帯でまずは一面を作りたいと話す。「40~60メートル級の鉄塔で3~4万局以上の規模を視野に入れている。1年で劇的に電波環境を変えてみせる」(宮川CTO)。

 900MHz帯は当初は5MHz幅×2しか使えないため、HSPA+から開始するが、15MHz幅×2への拡張が可能になる2015年ころにはLTEを導入する計画。900MHz帯にトラフィックを分散できた場合は、2GHz帯の一部を順次LTE化し、できるだけ早く周波数利用効率の良いLTEへとシステムを入れ替えていく考えも示した。

 トラフィック対策としては、同社の関連会社であるWireless City Planning(WCP)が提供するAXGP(TD-LTE)も活用する。既に発表済みのモバイルルーターのほかに(関連記事)、AXGPのハンドセット型端末の導入も予定。この場合、音声通話をソフトバンクモバイルの回線交換網にCSフォールバック(CSはCircuit Switchedの略)させる仕組みも構築中という。

[ソフトバンク 決算資料のページ]