写真1●米インフォア・グローバル・ソリューションズのディーン・ヘイガー マーケティング&ストラテジー担当上級副社長
写真1●米インフォア・グローバル・ソリューションズのディーン・ヘイガー マーケティング&ストラテジー担当上級副社長

 日本インフォア・グローバル・ソリューションズは2011年10月25日、新戦略となる「Infor10」を発表した。(1)ERP(統合基幹業務システム)パッケージなどのアプリケーション製品を業種別に再編、(2)ワークスタイル改革に向けたユーザーインタフェース(UI)の提供、(3)プラットフォームの提供、の三つから成る。一部製品は同日から提供開始し、2012年にかけて順次提供していく。

 米インフォア本社のディーン・ヘイガー マーケティング&ストラテジー担当上級副社長(写真1)は、「女子サッカーのなでしこジャパンが米国チームを破ったように、競争優位をもたらすスピードを実現するのがゴールだ」と語る。日本インフォアの村上智社長(写真2)は、「グローバルなレベルでのサプライチェーンの整備や経営の可視化を求める企業が増えている。だが、顧客のプロジェクトを見ると、導入のスピードや効果の面でまだ多くの課題を抱えている。新製品でこうした課題を解決していく」と語る。

写真2●日本インフォア・グローバル・ソリューションズの村上智社長
写真2●日本インフォア・グローバル・ソリューションズの村上智社長

 Infor 10では13業種ごとに必要な業務を定義し、買収などによって傘下に収めた100種類以上の業務パッケージから業務の実現に必要な製品を選び出し、当てはめていく。同社は20種類以上のERPパッケージや、CRM(顧客関係管理)、WMS(倉庫管理)、SCM(サプライチェーン管理)などの業務パッケージを持つ。植木貴三 執行役員ビジネスコンサルティング本部長は、「これまでも当社は、各分野で強いパッケージソフトを組み合わせるベスト・オブ・ブリード戦略を採用していたが、顧客ごとに毎回、パッケージを選んでいた。今回は事前に組み合わせを決めることで、短期での導入が可能になる」と説明する。

 13の業種は、航空および防衛、自動車、化学、流通、メンテナンスおよびレンタル、ファッション、飲料、製造、医療、ハイテク、ホスピタリティ事業、産業機器および機械類、公共事業である。「日本では自動車部品のサプライヤー、工業機械・装置や食品・飲料のメーカーなどの分野で成功している。各地域ごとに、当社が強みを持つ分野を選んで、そこから提供していく」とヘイガー上級副社長は語る。

 再編に伴って製品名も変更した。ERP「Infor ERP LN(旧Baan)」は「Infor10 ERP Enterprise」に、「Infor ERP SyteLine」は「Infor10 ERP Business」になる。製品名中の「Enterprise」は主に大企業向け、「Business」は主に中堅企業向けであることを表す。このほかERP「Infor ERP LX(BPCS)」は「Infor System i」と、米IBMの「IBM i(旧System i、AS/400)」向けを示す製品名に変わる。

 日本インフォアはまず自動車業界向けに「Infor10 ERP Enterprise」や「Infor10 ERP Business」、CRMソフト「Infor10 CRM Enterprise(旧Epiphany)」などを組み合わせて提供していく。組み合わせは全世界で共通して決まっているが日本では一部の製品を販売していないため、「日本語化などが済んでいる製品で代替するケースもある」(植木執行役員)。

 業種向けの組み合わせには、(3)の施策の一つとして提供するミドルウエア「Infor10 ION Suite」が含まれている。Infor10 ION Suiteに、複数のパッケージを連携するために必要な業務プロセスやデータ連携機能を実装して提供する。Infor10 ION SuiteはSOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方に基づいて、同社の製品やそのほかのシステムを連携するために必要なミドルウエアを統合した製品だ。

 (3)の施策の一環ではInfor10 ION Suiteに加えて、クラウドサービスの利用を支援する「Infor10 CloudSuite」も提供する。Infor10 CloudSuiteでは、オンプレミス(サーバー設置型)のアプリケーションとクラウドサービスを連携するためのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)や、業務パッケージをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供する。米国では一部をすでに提供済みで、「米国のデータセンターからのサービスであれば、日本からでも利用できる」(植木執行役員)という。

写真3●Infor 10の画面例。facebookに似た操作性を実現している
写真3●Infor 10の画面例。facebookに似た操作性を実現している

 (2)のワークスタイル改革に向けたUIは、「消費者向けWebサービスレベルのUIを提供する」(植木執行役員)ことが狙いだ。例えば、ソーシャルメディアのfacebookに似た画面を提供する(図3)。植木執行役員は「単に見た目がよいだけでなく、社員間のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の機能を取り込むなど、生産性が向上するための機能を持ち込む」と説明する。iPhoneやiPadといったスマートフォンやタブレット端末向けのUIも用意する。

 Infor10は親会社である米インフォアが9月に発表したもの。米インフォアのCEO(最高経営責任者)は、米オラクルの社長を務めていたチャールズ・フィリップス氏が務めている。11年7月には競合であるERPベンダーのローソンソフトウエアを買収し、20以上のERPパッケージやその他の業務パッケージを傘下に収めていた。Infor10は10年10月にCEOに就任したフィリップス氏の下で初めて発表となったインフォアの戦略となる。