2011年11月26日に開学する日本政策学校が、10月18日に「ソーシャルメディアが変革させるこれからの日本の政治」と題した開学前記念シンポジウムを開催した。同シンポジウムでは、国政、地方自治体、企業におけるソーシャルメディアの“達人”が登場、「政治とソーシャルメディア」の在り方についてそれぞれの考えを披露した。

ソーシャルメディアで政治家は反論が可能に

写真1●基調講演に立ったジャーナリストの上杉隆氏
写真1●基調講演に立ったジャーナリストの上杉隆氏
[画像のクリックで拡大表示]

 冒頭の基調講演に立ったのは、ジャーナリストの上杉隆氏(写真1)。同氏が「ソーシャルメディアを活用していれば、こんなことにならなかったのではないか」として取り上げたのが、鉢呂吉雄氏の経済産業大臣退任である。

 上杉氏は、一連のメディア報道と鉢呂氏へのインタビューを振り返り、実際の発言や行動とは異なる報道が独り歩きしたと断じた。「既存メディアは“デマ”を報道して、一人の閣僚を辞めさせてしまった」(上杉氏)。さらに、記者クラブや“ぶら下がり”取材などが国際的にみて特殊で、そこでのやりとりがいかに不透明であるかを指摘した。同氏は、多くの先進国と同じように、公人の発言や政府方針はすべての国民が同じようにアクセスできるようにすべきであると主張する。上杉氏はメディアの在り方を否定するだけでなく、「鉢呂氏もソーシャルメディアをうまく使いこなせなかった」と、同氏のネット利用の未熟さを指摘した。

 上杉氏は、東日本大震災後の大手メディアの報道が横並びだったとし、それを検証するメディアとしてソーシャルメディアを位置づけた。同氏が望むのは情報の多元化であり、ユーザーが情報を選べるようにすべきだと主張する。このところソーシャルメディアが急速に広がっていることについては、健全な方向に向かっているとする。ソーシャルメディアを使えば、事実と違う報道には政治家が自ら違うと発言できることから、政治家のソーシャルメディアの活用に期待を寄せた。

 来場者からは、「ネット上には信頼性に欠ける情報が多い」との指摘があったが、上杉氏は「様々な情報があった方が、間違いは正され、デマは否定されやすい」と回答。ネット上のデマについては、広がるのも早いが消滅するのも早いという認識である。

 むしろ怖いとしたのが、政府発表や大手メディアの報道が間違っている場合。マスメディアには間違いを認めない文化があるので、間違いが修正されずに残り続けるリスクがあるというのだ。ニューヨークタイムズに勤務経験がある同氏は、同紙の紙面に「間違い紹介ページ」が用意されているのは「人は誰でも間違うもの」という考えに基づいているものだとし、日本のマスメディアに対しては「間違いを認めず、嘘(=事実と異なる報道)には寛容な姿勢を改めるべきだ」とした。