写真1●サイボウズの青野慶久社長(写真:新関雅士)
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写真2●Kintoneの開発環境の画面
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写真3●Kintone上で動作するアプリのグラフ表示画面
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写真4●Kintoneの「タイムライン」表示の例(画面左側)
写真4●Kintoneの「タイムライン」表示の例(画面左側)
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 「No-Emailの次はNo-表計算。今年は表計算シートに頼らないワークスタイルを提案する」。サイボウズの青野慶久社長はこう語る(写真1)。青野社長は2011年10月14日、東京ビッグサイトで開催した「ITpro EXPO 2011」の講演で、企業が実践すべき新しいワークスタイルと、同社が開発中の新型クラウドサービスについて解説した。

 青野社長は昨年の「ITpro EXPO 2010」で、「No-Email」を提案している(関連記事)。No-Emailとは、文字通り電子メールを使わずに仕事を進めるやり方。グループ内の情報共有や連絡事項の伝達には、グループウエアソフトが備えるメッセージ共有機能や掲示板機能のほうが、電子メールよりも適している、という主張である。

 青野社長は、サイボウズ社内で実際に使っているグループウエアの画面を聴講者に見せながら、「サイボウズの社員は、社内のやりとりにはメールは使っていない。グループウエア上で連絡や共有はすべて済ませている」と説明する。例えば、あるプロジェクトについての連絡事項を関係者全員に行き渡らせるには、「そのプロジェクトにひもづけられた掲示板でやりとりしたほうが、便利だし確実。プロジェクトの経緯が追えるので、途中で入ってきた新しいメンバーにも情報を共有しやすい」という。

 今年の提案内容である「No-表計算」は、業務部門の現場でよく使われている、表計算シートによる情報共有を削減しようというものだ。案件管理や顧客管理などの業務アプリケーションを、Excelとその上で動くマクロで作っている業務部門は多い。こうしたExcelによるアプリケーションはたいがい現場の社員が作るため、現場の仕事に即したものを実現しやすい。バックログがたまりがちなIT部門の負担も軽減される。青野社長はExcelファイルのこの点については、「いわゆるエンドユーザー・コンピューティングの良さを備えている」と評価する。

 一方で青野社長は、問題もあると指摘する。一つは、マクロが複雑化すると改変が難しくなり、ほかの社員への引き継ぎがしにくくなること。また、個人のファイルとして扱われるため情報管理やガバナンスの徹底が難しいことなどだ。

 「エンドユーザー・コンピューティングの良さ。それからIT部門で管理・統制ができること。この両方を実現する『ファストシステム』を提案したい」。こう前置きして青野社長が紹介するのが、サイボウズが開発中のPaaSサービス「Kintone(キントーン)」(ITpro EXPO AWARD 2011の大賞を受賞)である。「ほしいもの(アプリ)がすぐできて、しかも信頼性が高い。そのようなシステムインフラとしてKintoneを提案する」(青野社長)。ファストシステムの「ファスト」には、手軽で素早い、その割には安心感がある、という意味を込めているという。

 Kintoneの特徴は大きく三つ。(1)ドラッグ&ドロップ操作を中心にしたノンプログラミング型の開発環境、(2)「タイムライン」表示による情報の把握機能、(3)管理機能である。

 (1)の開発環境では、テキスト入力やカレンダーなどの要素を画面に置いていくと、業務用のデータベースアプリケーションが構築できる(写真2)。青野社長は「ごく簡単なアプリなら、数分で作れてしまう」とアピールする。

 グラフや集計表の設計も可能(写真3)。グラフの各項目をクリックするとさらに詳細なデータを表示するドリルダウンの機能も備える。開発環境はWebブラウザから使える。

 (2)は、開発したアプリにかかわる更新情報を、Twitterなどのようにユーザーのメイン画面に表示する(写真4)。例えば営業担当者が案件管理のアプリを使って自分の業務を進めているとしよう。その営業担当者が入力した案件情報に対して、上司がコメント欄にコメントを入力したとする。するとKintoneは営業担当者のタイムラインに、上司がコメントをした旨を表示する。「タイムラインを見ていれば、自分が関わっている業務プロセスの状態がわかる」(青野社長)。

 (3)の管理機能は、ユーザーによる各種の更新情報を記録し閲覧できるようにするものである。「誰がいつ、どのデータをどう変更したのかをシステム側で把握できる。変更状況をタイムラインで逐一確認することも可能だ」(青野社長)。また、アプリケーション単位で、組織、役職、ユーザー単位でアクセス権を設定できる。

 青野社長は「Excelファイルで発生しがちな問題は、Kintoneで解決できる。Kintoneで、No-表計算のワークスタイルをぜひ体験してほしい」と語る。