写真●日経コミュニケーションの堀越功記者
写真●日経コミュニケーションの堀越功記者
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 「スマートフォンの波は巨大なルールチェンジだ」--。東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2011展示会場内メインシアターで、日経コミュニケーションの堀越功記者が「本番!エンタープライズ・スマートフォン」と題して講演。企業におけるスマートフォンの活用は当然の流れで、むしろ積極的な活用が望ましいという見解を示した。

 堀越記者はまず、日経コミュニケーションで実施している調査結果を引用。2009年秋には「業務用途にスマートフォンを利用する予定はない」と回答した読者が82.6%だったのに対し、現在では約半数の人がスマートフォン/タブレットの業務利用を検討しているという。わずか2年の間に、企業の意識が大きく様変わりしたと指摘した。

 ただし、企業で導入する際には、セキュリティについて考慮することが欠かせない。そのためのポイントとして4つを挙げた。(1)端末のマルウエア対策、(2)端末の紛失対策、(3)社内システムへの安全なアクセス(デバイス認証やVPN)、(4)端末の見える化--である。特に(4)の端末の見える化を実現する技術として「MDM(Mobile Device Management)」が登場したことで、業務利用が現実的になってきたという。

 続いて、ファイザー、サントリー、ミサワホーム、タカタなどの事例を挙げて、スマートフォンやタブレットを業務利用するための各社の工夫を紹介した。例えば、ファイザーではMDM製品を導入したうえで、各端末の登録など設定作業はユーザー自身に行わせることでIT部門の負担を減らした。

 これらの取材経験から堀越記者は、「企業はスマートフォンやタブレットを積極的に活用すべき」と考えるようになったという。堀越記者も以前はPDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)の延長としてスマートフォンやタブレットを捉えていたが、導入企業で変革が起こっているのを見て考え方を改めた。スマートフォンを持った社員からボトムアップで改善提案が続々と寄せられるようになるなど、大きな変化が起こるという。

 こうした動きを堀越記者は「携帯からスマートフォンへの変化は巨大なルールチェンジで、メインフレームからオープンシステムへの変化に匹敵する」と総括する。キャリア主導だった携帯電話に対し、スマートフォンではユーザー企業が主導権を握れるようになる。さらに、IT機器の進歩自体をコンシューマが牽引するようになってきていると指摘した。その象徴が「この便利な端末を業務にも使いたい」という声を反映させた私物利用(BYOD)だという。企業のIT管理者はこうした大きな流れに逆らわず、課題をコントロールしながらうまく積極的に活用していくことが重要である、と締めくくった。