写真●メインシアターの「名物記者のトレンド解説」に登壇した日経情報ストラテジーの小林暢子副編集長
写真●メインシアターの「名物記者のトレンド解説」に登壇した日経情報ストラテジーの小林暢子副編集長
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 2011年10月14日まで東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2011」展示会場内のメインシアターで10月13日、日経情報ストラテジーの小林暢子副編集長が「名物記者のトレンド解説」に登壇。「スマホ&タブレット端末で組織力アップ~『速い』『安い』『使いやすい』を実現する勘所」と題して講演した(写真)。

 今回、小林副編集長がテーマに選んだのは、オフィスワークではなく営業担当者や店舗スタッフといったこれまでIT活用が進んでいなかった“現場”の業務改革。それを、スマートフォンやタブレット端末を使って実現している実例を紹介した。

 小林副編集長はまず、講演タイトルの副題にも記された「速い」「安い」「使いやすい」を解説した。これらは、現場でITを活用するためのポイントだと小林副編集長は言う。

 「営業の現場では顧客を長く待たせるわけにはいかない。時間がかかるシステムでは、かえって仕事の邪魔になってしまう」(小林副編集長)。現場で利用するときに、「速さ」は不可欠な条件と言える。「安い」はもちろんコストのことだ。1人に1台ずつ導入するとなると、低コストのシステムも大きな条件となる。そして三つ目の「使いやすい」も現場には不可欠。オフィスとは異なり、「立ち仕事などで利用されることも考慮しないといけない」と小林副編集長は指摘する。

 こうした条件のすべてではないものの、どれかをきちんとクリアして成果を挙げている事例を小林副編集長はいくつか紹介した。

 なかでも興味深かったのは、アパレル販売大手のはるやま商事の事例だ。同社は2011年8月から9月にかけて、iPadを約1000台導入したという。

 衣料販売の現場では、販売時に様々な情報が必要になる。サイズ別の在庫情報や会員カードのポイント情報などだ。iPadの導入前、はるやま商事ではこれらの情報を得るために、いちいちPOSレジまで販売員が足を運ばなければいけなかったという。「週末などには販売員がレジに列を作り、最悪の場合は顧客が帰ってしまったりしたこともあったと聞いている」(小林副編集長)。

 そこで同社は、販売員が接客業務に必要な情報をすべて手元で得られるようにiPadの導入に踏み切ったという。それだけではなく「iPadで会計処理までできるようにした」(同)。これにより同社の店舗では、会計時に現金やクレジットカードを持ってPOSレジに行くまで、販売員はほとんど顧客のそばを離れなくて済むようになったという。

 最後に小林副編集長は、スマートフォンやタブレット端末を業務利用する際の勘所を3点紹介した。「業務イメージをしっかり作る」「コンテンツに手を抜かない」「紛失・盗難には注意する」---の三つだ。

 スマートフォンやタブレット端末を社員に配布する場合、特に目的を定めずに与えてみて、社員のクリエイティビティに期待するといった企業もある。しかし、それではどうやって使ったらいいか迷う社員も出てくる。「やはり、最初から業務でどう使うかのイメージをしっかり作り込むほうがうまくいくようだ」(小林副編集長)。

 「業務改革」を旗印に、新しいデバイスを導入することは少なくない。しかし肝心なのは、やはり、最初にどういう戦略・目的を持って導入するかということであろう。