写真●日経コンピュータの田中淳副編集長
写真●日経コンピュータの田中淳副編集長
[画像のクリックで拡大表示]

 「IFRS(国際会計基準)の強制適用が延期されたが、将来的に、会計基準の国際化は不可避だろう」---。2011年10月13日、東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2011」のメインシアターに日経コンピュータの田中淳副編集長が登壇。6月の金融担当大臣の談話を皮切りに適用延期となったIFRSの今後についてこう語った。

 講演ではまずこれまでの経緯を振り返った。2009年に金融庁が発表した「中間報告(我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書)」では、2012年までにIFRSを強制適用(日本の会計基準に採用)するかどうかを決定し、強制適用する場合は2015年または2016年からとされていた。「2009年の中間報告を受け、国内の上場企業はこぞって強制適用への準備を開始した。IFRSの早期導入も開始され、2011年3月決算時点で3社がIFRSを採用していた」(田中副編集長)。

 ところが、2011年6月に自見庄三郎金融担当大臣が「2015年3月期のIFRS強制適用は無い」と発言。強制適用が決定した場合は5年から7年の準備期間を設ける意向を示した。IFRSの強制適用は、2017年3月期以降に延期された形となっている。

 青天のへきれきのように湧き上がったかに見えるIFRS適用延期の議論だが、田中副編集長は「この騒動は、IFRS適用への慎重派によって1年以上前から入念に準備されてきたものだ」と分析する。

 慎重派が最初のアクションを起こしたのは2009年11月だ。この月、長らく休会していた経済産業省の企業財務委員会が再開。IFRSを含めた開示制度を再設計するよう求めた中間報告「会計基準の国際的調和を踏まえた我が国経済および企業の持続的な成長に向けた会計・開示制度のあり方について」を取りまとめ、2010年4月に公表した。

 また、2011年5月に製造業を中心とした21社と日本商工会議所が発表した要望書「我が国のIFRS対応に関する要望」でも、「IFRS強制適用については産業界に不要な準備コストが発生しないよう、十分な準備期間(例えば5年)・猶予措置設けることなどが必要」としており、6月の自見大臣の発言と同様の内容になっている。

 2011年6月に企業会計審議会が開催され、IFRSに関する議論が再開した。審議会を傍聴した田中副編集長は、「議論はまとまらず、結論はすぐに出そうにない」と感じたという。

 IFRS強制適用の見通しは不透明だが、田中副編集長は、「日本企業のグローバル化は勢いを増しており、将来的に会計基準の国際化は不可避だ。国際標準の会計基準となると、ごく自然にIFRSを選択することになるだろう」と述べた。