講演をするIIJの松崎吉伸シニアエンジニア
講演をするIIJの松崎吉伸シニアエンジニア
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 ITpro EXPO 2011の特設ステージ「IPアドレス枯渇対策ワークショップ」では、インターネットイニシアティブ(IIJ)の松崎吉伸シニアエンジニアが2011年10月12日に「『World IPv6 Day』を経てわかったこと」と題する講演を行った。

 World IPv6 Dayは、Webサイトを24時間限定でIPv6対応させる世界規模のトライアル。2011年6月8日の日本時間午前9時から実施された。その目的は、IPv6対応の課題を明らかすることやIPv6対応を促進すること。この趣旨に賛同したサイトは世界で400以上あり、日本からは約20組織が参加した。

 松崎氏は講演の冒頭で、自身が着ているTシャツにプリントされた網走刑務所にまつわる話を披露。「人は何かを想定してものを作る。刑務所でいえば壁と鍵があれば逃げられないだろうと考える。ところが実際には脱獄という想定外の事態が起こってしまう。World IPv6 Dayでもソフトウエア開発者の想定を超えたネットワーク環境があり、そこで問題が発生した」と説明した。

 具体的には、ネットワークレベルでIPv6インターネットへの接続性がない環境や、グローバル・ユニキャスト・アドレスが設定されていない環境があったことを明かした。

 続いて松崎氏は、World IPv6 DayにおけるWebサイトのIPv6対応が様々だったことを紹介した。(1)Webサイト自体をIPv4/IPv6デュアルスタック対応にする、(2)IPv6/IPv4トランスレーター機能を備えるロードバランサーを置く、(3)リバースプロキシを設置する、(4)IPv6対応のCDNを利用する---の4タイプを説明した。

 こうしたサイトでのトラブル事例として、「DNSの設定を間違えてすべてエラーになった」「リバースプロキシでセッション数のリミットに引っかかった」「ICMPをフィルタリングする設定になっていてPathMTUディスカバリーが流れなかった」などの問題があったこと紹介し、運用技術の向上が大事と指摘した。

 また日本固有の話として、NTT東日本/西日本のNGNがIPv6閉域網であることを指摘。フレッツ 光ネクストなどのサービスを利用している端末からは、NGNがIPv4/IPv6デュアルスタックに見えるため、まずはIPv6での通信を試みる。ところがNGNが閉域網なのでIPv6インターネットに出て行けず、IPv4通信に自動的に切り替わる。これはIPv6-IPv4フォールバックという現象だ。このIPv6-IPv4フォールバックが多発すると、Webアクセスの遅延が発生したり、ひどいときには閲覧できなかったりする。

 対策として松崎氏は、IPv6インターネット接続の利用や、新しいソフトウエアの利用を推奨する。特に古いソフトウエア環境ではIPv6-IPv4フォールバックの問題がある。具体的にはWindows XPでInternet Explorer 7を使っている環境を挙げ、すぐにでもどちらかをバージョンアップしたほうがいいと話した。

 最後に松崎氏は、次回のトライアルとして「Wrold IPv6 Week」の企画が進んでいることを紹介した。2012年6月に1週間かけて実施される予定という。「Wrold IPv6 WeekではWorld IPv6 Dayとは違い、開催後もAAAAレコードを削除しないので、IPv6対応のサイトが増えることになる。またアクセス事業者にも参加を呼びかけ、ISPごとに何%のユーザーがIPv6でアクセスできたかを計測する予定」(松崎氏)。

 なお松崎氏のこの講演は、14日(金)の14時40分からも、ITpro EXPO 2011展示会場内の同じステージで行われる予定となっている。