写真●日経SYSTEMSの森重和春 副編集長
写真●日経SYSTEMSの森重和春 副編集長
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 「コストや技術の制約で、クライアント仮想化の導入はなかなか進まなかった。だが、仮想化製品の機能強化が進むなど、導入のための環境は整っている」---。「ITpro EXPO 2011」展示会のメインシアターに登壇した日経SYSTEMSの森重和春副編集長は、「クライアント仮想化の導入は、いよいよ本格化するのか」と題して講演した。

 サーバー仮想化が普及してきたテンポと比べると、クライアント仮想化の普及はやや遅れている。最近の市場調査の結果もこうした傾向を裏付けている。普及が遅い理由について森重副編集長は、「まず、クライアント仮想化は、初期導入コストに対して、投資対効果が分かりにくい」という点を挙げる。サーバー仮想化は、サーバーの集約によって物理サーバーの台数が減り、コスト削減効果を明確に見積もれる。一方、クライアント仮想化では、普通のPCに比べて初期導入コストがかかるため、運用コストまで含めた投資対効果を示さなければならないが、それを明確に示しづらいのが実情だ。

 動画再生の処理能力不足など、クライアント仮想化の技術的な課題もあった。例えば、「以前の画面転送プロトコルでは、動画の再生時にデータ転送が追い付かず、ブロックノイズが発生する場合があった」(森重副編集長)。

 だが、コストや技術の面でクライアント仮想化を後押しする要素がいろいろ出てきた。コスト面では、クライアント端末の低価格化、仮想マシンの集約率向上、集中管理による管理コスト削減などが挙げられる。

 技術面での進歩も大きい。サーバーに実装したグラフィックスカードを仮想デスクトップで利用できるCitrix XenDesktopの「HDXテクノロジ」やWindows 7でバージョンアップした画面転送プロトコル「RDP 7.0」、VMware Viewの新プロトコル「PC orver IP」などにより、速い動きの画面転送に対応している。ウイルス対策ソフトも、仮想マシンごとにインストールして実行するのではなく、ウイルス対策専用の仮想マシンが仮想マシン全体をスキャンする方式に進化している。各仮想マシンの処理負荷を軽減できる。森重副編集長はこのほか、Webカメラやヘッドセットといった周辺機器が利用可能になっていることやオフラインでの利用技術が向上している点などについて言及した。

 クライアント仮想化を導入する際の課題はまだ残っているものの、それを解決する方法はいろいろ考えられる。大規模な導入事例も増えている。今後のクライアント仮想化の導入について、森重副編集長は「コスト、技術、運用面の問題をどう解決していくかを踏まえ、メリット・デメリットを明確にしたうえで検討を進めてほしい」と強調した。