アクセンチュアの程近智代表取締役社長 撮影:新関雅士
アクセンチュアの程近智代表取締役社長 撮影:新関雅士
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 「2011年、日本は震災で大きな犠牲を払った。我々日本人は、この不幸を契機に変えなければいけない。将来、この震災は日本が再び世界で輝くための転換点になったと振り返ることができるように」---。2011年10月12日、ITpro EXPO 2011の特別講演で、アクセンチュアの程近智代表取締役社長(写真)はこう呼びかけた。

 程社長は、震災から復興しようとしている今の日本は、イノベーションが創出されやすい環境にあると考える。

 「例えば、スマートシティ。欧米各国は財政難でこの分野に投資する余裕がないが、日本は原発事故によってエネルギー政策の転換が急務になった。世界は、日本からスマートシティ分野で新しいソリューションが生まれるのではないかと期待している」。

 エネルギー問題のほかにも、少子高齢化による労働人口の減少や経済成長の鈍化など、日本は今後世界が直面する社会問題が先行して訪れている「課題先進国」だ。程社長は、この状況をネガティブにはとらえていない。「少子高齢化によって日本は経済規模ではもはや世界トップは狙えない。しかし、課題先進国ならではの地の利を生かし、課題解決に努力することで、知財力、課題解決力で世界一になれる」。

 日本経済の復興には、企業の成長が不可欠だ。企業の成長戦略にとってIT部門が担う役割は大きい。しかし程氏は、「現在のIT部門、IT子会社には大きな改革が必要だ」と指摘する。

 クラウドサービス、パッケージソフト、ITアウトソーシングなどの普及により、システムのメンテナンスやソフトウエアのバージョンアップといった従来のIT部門の業務は減少の一途をたどっている。「IT技術の調達や業務改革など、企業内にはIT人材の活躍するフィールドが多くある。しかし、従来型業務の知識しかもたないIT人材は、この先不要だ」。

 親会社のITを担当するIT子会社についても同様だ。「IT子会社は、自社システムの外販による利益貢献が期待されていた時代があったが、経済成長が鈍化する日本市場では外販事業の収益化は難しい。成長戦略に貢献する技術を持たない中途半端なIT子会社は、思い切って整理するという経営判断が必要だ」。