写真1●富士通の上嶋裕和氏。撮影:後藤究
写真1●富士通の上嶋裕和氏。撮影:後藤究
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 「家庭、企業、社会など、大きな変化が表れている。ICTの活用の場も、新たな領域へと移っていく」---。2011年10月12日、ITpro EXPO 2011の特別講演で、壇上に立った富士通の上嶋裕和氏(執行役員常務、写真1)はこのように述べ、今後ICTの活用シーンが劇的に変わることを強調した。

 講演のタイトルは「暮らしが変わる、ビジネスが変わる、個人・企業・社会に貢献する新たなICTのかたち」。上嶋氏はまず、現状の変化を分野別に指摘。例えば家族は「絆」が大事に、企業が目指すのは「顧客満足度」から「顧客との対話」へ。社会のコミュニケーション基盤は「SNS」、CPUやメモリーなどの性能は数十万倍以上になった、と説明した。そして「モノは所有から利用へ。ブランド主義は終わり、自分を賢く、生活を便利にするモノへと個人、企業、社会の欲求がシフトしている」(上嶋氏)とした。

 上嶋氏は次に、調査会社のICT市場予測データを紹介。それによると、既存事業は今後横ばいかやや落ちる、一方で新規事業が急速に増える見通しであることを説明した。

カギは「ビッグデータ」と「センサー」

 続いて「既存事業」と「新規事業」の二つに分けて、講演の本題である、ICTの活用場面を、事例を交えて取り上げた。

 既存事業については、ICTとビジネスの融合がますます大事になると指摘。システムのライフサイクルではなく、ビジネスのライフサイクルをICTで革新する人材が必要だと訴えた。実際に富士通では「フィールドイノベーター」と呼ぶ専任の担当を約500人用意し、その役割を担っていると説明した。

 新規事業については「リアル(現実)の世界で発生した膨大な量のデータを、バーチャルな環境に渡し、それを意味のある情報へと進化させて再びリアルな世界に戻すことが広がる」(上嶋氏)という展望を紹介。ここで、膨大な量のデータである「ビッグデータ」と、それをやり取りする入出力装置の「センサー」に関する技術が、今後重要な役割を果たすとの見方を示した。

 具体的にビッグデータとセンサーを使った事例も紹介。個人の行動パターンのデータから次の行動を予測する例、みかん畑で収穫期をセンサーが知らせる例、コピー機のトナーが切れたことを知らせる例、飼牛に万歩計を付けて繁殖期を知らせる例などの事例を説明していった。

 上嶋氏は最後に、「with you」という言葉をスクリーンに映し、ここにも変化があると指差した。「これまではお客様と一緒に、という意味だったが、今はそれだけではない。他の企業や社会など、さまざまな立場の人たちと一緒に、これから始まるICT活用の場を作り上げることが大切だ」と締めくくった。