写真●日本マイクロソフトの樋口泰行社長。撮影:後藤究
写真●日本マイクロソフトの樋口泰行社長。撮影:後藤究
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 「個人の生活にとって便利なデバイスがどんどん浸透していくのは不可避の現象。企業のIT担当者は、ライフスタイルとワークスタイルとの間に生じるギャップ解消を真剣に考える時代が来る」--。東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2011の特別講演に立った日本マイクロソフトの樋口泰行社長(写真)は、最新のITトレンドをこう解説した。

 樋口社長によれば、「オンプレミスからクラウド」、「パソコンからマルチデバイス」など、様々な企業のITシステムを取り巻く環境の変化がある中で、「ライフスタイルとワークスタイルのギャップ解消」という新しいテーマがますます重要になってくるという。「企業システムが求める要件を、これまではIT技術開発の方向性を主導してきたのに対し、これからはコンシューマーが求めるITプロダクトが最先端のIT技術を主導していくようになる」(樋口社長)。生産性向上に役立つ最先端のIT技術を企業システムの中に取り込むには、コンシューマーITの進化を無視できないという指摘だ。

 例として、スマートフォンやパソコンなどマルチデバイスを使いこなす個人のライフスタイルを挙げた。「ある調査で、朝起きてからまずすることがスマートフォンでメールやSNS(ソーシャルネットワークサービス)の確認、という人が7割という結果が出た。まさに何でもできる生活万能ツールとして身体の一部、ライフスタイルそのものになってきている」という。「さらに今後は、高齢者の生活支援や緊急時の連絡手段としても使えるようになり、低リテラシー層にどんどん浸透していく方向にある」。

 ところが、こうした個人の生活スタイルとは対照的に企業サイドでは、「メールを送るのに上司の承認が必要だとか、SNSのようなWebサイトには接続を禁止するといった不便を強いるケースもある」。これでは、最先端のIT技術を生産性向上に生かすことはできない。そこで樋口社長は「個人のライフスタイルを企業がコントロールすることはできない。ライフスタイルの進化を、生産性の高いワークスタイルに応用できるように、前向きに捉えていくことが重要だ」と提言する。

個人と企業のギャップを埋めるのは新デバイスとソーシャル

 続けて、ライフスタイルとワークスタイルのギャップを埋めるために考えるべきポイントを三つ挙げた。

 まず一つ目は、デバイスそのものがワークスタイルとの親和性を備えていること。例えば、文書作成や表計算など、生産的な仕事にも使えることが重要だという。その点、同社が提供するスマートフォン「Windows Phone 7」はMicrosoft Officeアプリとの親和性が高いことが長所だとする。

 次に企業内のソーシャル化にも取り組む必要があるという。ソーシャルアプリやグループ連携ツールを駆使して、現場でリアルタイムに起こっているつぶやきを拾い上げ、ワークスタイルの中にいかに取り込んでいくかを考える必要性が出てくるという。

 三つ目は、セキュリティをはじめ、社内システムとの連携、管理のしやすさといった、既存のITリソースとの併用を前提に、どこに要件のバランスをとるかの検討だ。「日本マイクロソフトではWindows Phone 7を人事や経理など、社外に出ない人にも配布してこれらの課題に取り組んでいる」(樋口社長)。

 さらに、忘れてはならない視点として挙げたのはデバイスだけでなくエンド-エンドのソリューションを考えなくてはならない、ということ。

 既存リソースとの連携や移行、開発のしやすさといった基本要件でだけでなく、クラウドを使うのであれば、パブリックリソースを使うのか、パートナーのサービスなのか、プライベートで構築するのか--など、柔軟に対応できるソリューションを選ぶ必要が出てくる。そこで、「デバイスからクラウドまで、コンシューマからビジネスまで手がけているのが、マイクロソフト。すべてを総合的にカバーしてエンド-エンドのソリューションを提供できる」と自社の優位性を強調した。

 講演の後半では、Windows Phone 7端末を使った実演で社内SNSの活用シーンをデモし、続いて、スレートPCを使った見積もりや伝票処理などの営業支援システムの導入例を映像で紹介した。樋口社長は「今後はスマートフォンのユーザーインタフェース(UI)をWindowsパソコンにも応用していく。スレートPCやパソコンを含めたマルチデバイスの利用環境をブラッシュアップしていく」と講演をまとめ、コンシューマーITによる企業システムの進化を強調した。