写真●既成概念の打破を主張した、、米Gartner Researchのマーク・ラスキーノ バイスプレジデント兼ガートナーフェロー
写真●既成概念の打破を主張した、、米Gartner Researchのマーク・ラスキーノ バイスプレジデント兼ガートナーフェロー
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 「今は情報化社会の中間地点。来る後半に向けて、既存の常識、価値観にとらわれてはいけない」。東京・台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAで開催中の「Gartner Symposium/ITxpo 2011」において、米Gartner Researchのマーク・ラスキーノ バイスプレジデント兼ガートナーフェローは2011年10月5日に講演、これまでにITプロフェッショナルが蓄積した経験が足かせになり得ることを強く警告した。

 ラスキーノ氏は講演の冒頭、「我々は今、60年から80年ほど続くであろう情報化社会の中間にいる。従来の見方、言い換えれば、情報化社会の前半に培った見方は、今後は通用しない」と主張した。

 情報化社会の前半では、情報化のインフラを形成する企業、例えばIBMやHP、Cisco Systemsなどが主導権を握っていたが、来る後半においては、「インフラを活用する企業や人々に富が移る」と述べ、現在はその変換期にあると位置付けた。

 そのうえで、情報化社会の前半に経営者やITプロフェッショナルが学んだことは、今後は通用しなくなるとし、以下の例を挙げた。

 ラスキーノ氏は、一つ目の具体例として「コンピュータは高価なものなのか」と会場に呼びかけた。「従来、企業情報システムを構成するコンピュータは高価だった。今でも古いやり方に固執する限りはそうだ。しかし、コンピュータの価格性能比は劇的に向上しており、今ではコンピュータは高いとは言えない」。

 また、別の例として、「大規模なIT投資ほど大きな成果をもたらすか」を挙げた。「従来は大規模なIT投資を行える大手企業が、最先端のITシステムを利用でき、それを競争優位性の向上に生かすことができた」。しかしながら、これが当てはまらなくなっているという。「ベンチャー企業であっても最先端のITシステムを手軽に利用できる。クラウドコンピューティングにより、安価で柔軟性・拡張性を備えたITシステムを誰でも使えるようになった」。加えて、企業システムはもはや資産ではなく、負担になりつつあると指摘した。

 さらにラスキーノ氏は、「経験は視野を狭める」と警告。「ビル・ゲイツ氏がインターネットの大きなうねりに気づくのが遅れたように、偉大なITリーダーであっても先を見通せなくなっている。むしろ、従来の経験が足かせになることがある」と強調した。

 こうした従来の経験や常識が当てはまらない具体例を挙げながら、講演を通じてラスキーノ氏が主張したのは、既成概念の打破だ。ITに関する新しい常識、価値観を身に付ける必要性を繰り返し説いた講演だった。