写真●米Gartner ResearchでVP & Gartner Fellowを務めるSteve Prentice氏
写真●米Gartner ResearchでVP & Gartner Fellowを務めるSteve Prentice氏
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 「ITのコンシューマライゼーションは、社会や人の心理にどう影響を与えるのか、という社会学の領域だ」---。米Gartner Researchのフェローで「ITのコンシューマライゼーション」を提唱しているSteve Prentice氏(写真)は2011年10月5日、カンファレンス「Gartner Symposium/ITxpo 2011」の会場でラウンドテーブルを開催。企業情報システムの分野に急速に浸透しつつあるコンシューマー技術のトレンドを解説した。

 Prentice氏がITのコンシューマライゼーション(消費者が使う技術や消費者の嗜好をITに生かすこと)に着目したのは2005年。当初はモバイル端末などのデバイス技術に注目していたが、今ではSNS(ソーシャルネットワークサービス)や私物の業務利用といった流れを受けて、コンシューマ技術が人の心理にどう影響を与えるのかに関心があるという。

 ラウンドテーブルでPrentice氏は、個人の行動を変える5つのトレンドを示した。

 一つ目のトレンドは、年を追うごとに消費者がより多くの情報や知識を持つようになっていること。ただし、検索というのは一見すると能動的な情報収集行動に見えるが、検索結果は検索エンジンの色眼鏡を通したものであるとした。

 二つ目のトレンドは、人と人とをつなぐソーシャル技術の活用が拡大していること。現在の人は、SNSなどを利用して情報を共有している。こうした社会への接し方が重要になっている。企業の販促情報などへのリーチがWeb上よりもFacebook上の方が多いといった現象も起こっている。

 三つ目のトレンドは、経済活動などにおいて消費者の行動パターンに変化が起こっていること。現在では、現物資産ではなくソーシャルな仮想空間上の資産も登場している。個人を取り巻く環境も、これまでは家族のつながりを重要視していたが、今では友人と広く浅くつながるなど、より個人中心型の社会になってきている。伝統的に集団傾向が強いアジアにおいても個人の欲望が集団の要請を上回る状況が起こっている。

 四つ目のトレンドは、ゲームのように、工夫や試行による結果として達成感や報酬を得るゲーミフィケーションのやり方が登場していること。人々は、新しいデバイスが登場すると、デバイスを入手して実際に体験・発見しながら使い方を学ぶようになった。企業も、成果に報酬を付けるなど、ゲームのように仕事に取り組める環境を提供しつつある。

 五つ目のトレンドは、消費者がアプリケーションに深く関わるようになっていること。例えば、オンラインゲームでは、利用者の要望や行動理念などを反映したものになる。市場にあるサービスは、消費者の行動や考え方をシミュレーションで実験するようになっている。先述したゲームにおいても、達成感だけでなく実態としての報酬につながるサービスが出てきている。