米Gartnerは2011年10月3日、2012年の戦略的テクノロジートップ10を発表した(表1)。戦略的テクノロジーとは、今後3年間で企業に大きな影響を与える可能性を持つ技術のこと。今後大きな変化や破壊をもたらすと予想する。

表1●2012年の戦略的テクノロジートップ10
人の視点モバイルタブレットと次世代型製品
モバイル・セントリック・アプリケーションとインタフェース
コンテキストとソーシャル・ユーザー・エクスペリエンス
人の視点とビジネスの視点インターネット・オブ・シングス
ビジネスの視点Appストアとマーケットプレイス
次世代アナリティクス
ビジネスの視点とIT部門の視点ビッグデータ
IT部門の視点イン・メモリー・コンピューティング
超低消費電力サーバー
クラウドコンピューティング

 10月3日から5日まで東京・台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAで開催中の「Gartner Symposium/ITxpo 2011」において、Gartnerはメディア向け説明会を開催。2012年のITトレンドについて解説した。

 米Gartner Researchのピーター・ソンダーガード シニアバイスプレジデントは、「ITを競争優位性の確保のために使う傾向が強まっている。そうしたIT投資では『クラウドコンピューティング』『ソーシャル』『コンテキスト・アウェア・コンピューティング』『パターン・ベース・ストラテジー』の4種類のトレンドを踏まえる必要がある」とした(写真1)。

 この4種類のITトレンドは「過去20年間かけて作ってきた企業情報システムのアーキテクチャを壊す、全く新しいコンピュータアーキテクチャとなる」(ソンダーガードSVP)。例えば、クラウドによって安価に高い処理能力を使えるようになる。ソーシャルネットワーキングに慣れたユーザーは、振る舞い自体を変えていく。「複数のユーザーやグループでシステムを使えるようにしたりといった対応が求められる」(同)。

 これら4種類の投資トレンドを、技術トレンドに対応させたのが戦略的テクノロジートップ10である。Gartner Researchのカール・クランチ バイスプレジデント兼最上級アナリストは、「コンピュータは人類が初めて経験するくらい低廉化、小型化、高速化している。また、コンピュータ同士がつながることでシステム全体の価値は高まる」と、ICTの古典的経験則であるムーアの法則、メトカーフの法則をまとめた(写真2)。この経験則に基づく変化が急速に起こっており、戦略的テクノロジートップ10に挙げた技術が重要になっている。

写真1●米Gartner Researchのピーター・ソンダーガード シニアバイスプレジデント
写真1●米Gartner Researchのピーター・ソンダーガード シニア
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写真2●米Gartner Researchのカール・クランチ バイスプレジデント兼最上級アナリスト
写真2●米Gartner Researchのカール・クランチ バイスプレジデント兼最上級アナリスト
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 例えば、モバイルコンピューティングの台頭が一例だ。「紙の航空券は携帯電話に置き換わり、ゲームはジェスチャーで遊べるようになっている」(クランチVP)。スマートフォンが普及したことで、ユーザーの状況に応じたアプリの利用が重要になっている。モバイルやソーシャルの普及で分析すべき多くの情報が生まれると同時に、クラウドによって多くの情報を分析できるコンピューティング環境も整ってきた。

 モノのインターネットへの接続(インターネット・オブ・シングス)が今後増えていき、「建物内のセンサーや機器、商品の状態などがインターネットにつながり、その大量のデータの管理が課題になっていく」(クランチVP)。大量データ処理はヘルスケア分野の革新にもつながる可能性がある。「テラバイト単位の遺伝子を解析して、薬の効用が分かるとことも期待できる」(クランチVP)。大量データ処理を支える技術として、クラウドコンピューティングのほかイン・メモリー・コンピューティング、超低消費電力サーバーが鍵になるとしている。