日本ヒューレット・パッカード 副社長執行役員パーソナルシステムズ事業統括 岡隆史氏
日本ヒューレット・パッカード 副社長執行役員パーソナルシステムズ事業統括 岡隆史氏
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 「現時点では、分社化を第一の選択肢として、パソコン事業再編の準備を進めている」。日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の副社長執行役員パーソナルシステムズ事業統括を務める岡隆史氏は2011年9月16日、日経パソコンの取材に対してコメントした。

 米ヒューレット・パッカード(HP)は8月18日(米国時間)、パソコン事業の大幅な見直しによる強化を発表した。発表では、他社への売却による事業分離の可能性もあるとしていたため、一部では、同社がパソコン事業から撤退すると報道された。

 これについて岡氏は、「大きな誤解。HPがパソコン事業から撤退することはない」と強調する。「パソコン事業の見直しは、同事業を強化するため。同時に発表した、webOS端末のハードウエア事業からの撤退と混同されて、『パソコン事業からの撤退』と報じられてしまった」。

 発表当初は、分社化(子会社化)や他社への売却は選択肢の一つで、HPに残した形での再編もあり得るとされていた。「いずれの選択肢についても、可能性は同等だった」(岡氏)。

 しかしその後、検討を重ねた結果、分社化を第一の選択肢としたという。分社化によるメリットは、「迅速な経営判断が可能になることと、パソコン事業で得た利益を同事業に全て投資できるようになること」(岡氏)。スピードが第一のパソコン事業では、これらは特に重要だとする。「迅速な判断と再投資により、魅力的な製品の開発や販売体制の拡充などを強化できる。これらは、ユーザーや販売パートナーのメリットになるだろう」(同氏)。

 とはいえ、分社化が決まったわけではない。「パソコン事業の再編は、ユーザーや販売パートナーのために行うこと。ユーザーやパートナーのメリットにならないようなら、分社化しないでHPに残すといった他の選択肢もあり得る」(岡氏)。

 それでも今回、「分社化が第一の選択肢」とわざわざ明らかにしたのは、「HPの透明性を示すため」と岡氏は語る。HPでは現在、分社化した場合にどうなるかについて、ヒアリングや評価を開始しているという。「まだ決定していないものの、こういった検討段階にあること自体を、外部に伝えることが重要だと考えた」。

 国内においてパソコン事業の再編で気になるのは、東京の昭島工場で生産している「東京生産(Made in Tokyo)」ブランド。同工場では2011年8月にノートパソコンの生産も開始。2012年2月までには、国内向けノートパソコンの8割以上を生産すると発表したばかりだ。

 これについて岡氏は、「今回の再編は、パソコン事業をよくするためのものにほかならない。このため、同事業を伸ばす要素である昭島工場の『東京生産』は、事業体制がどのようになっても継続する」と断言する。

 実際に分社化を選ぶかどうかは、2011年中に結論を出すという。分社化を選択した場合には、決定から半年後ぐらいから手続きを開始する予定だとしている。ただ、分社化に関係する法律は国によって異なるので、「分社化が完了するまでの時間は、国によって変わってくるだろう」(岡氏)。