米AT&TによるドイツDeutsche Telekom子会社の米T-Mobile USA買収計画が米司法省(DOJ)の反対に遭っているが、計画が撤回された場合にDeutsche Telekomは違約金を受け取れない可能性があるとの見方が浮上した。ドイツ時間2011年9月5日の英メディア記事(Reuters)によると、違約金が発生するのは一定の条件に該当した場合のみだという。

 AT&Tは今年3月20日、T-Mobile USAを約390億ドルで買収することでDeutsche Telekomと合意したことを発表した(関連記事:AT&TがT-Mobile USAを約390億ドルで買収へ、米国民95%にLTE提供を目指す)。合意条件には、買収が成立しなかった場合、AT&Tが現金30億ドルを含む違約金60億ドルを支払うことが盛り込まれている。DOJは9月1日に、同買収が市場競争を著しく阻害するとして独占禁止法訴訟を起こしたことを明らかにした(関連記事:米当局がAT&TのT-Mobile買収阻止に向け提訴)。

 Reutersの取材に応じた関係者の話では、違約金が発生する条件には、一定の期限内に当局から承認を得ること、T-Mobile USAの価値が一定レベルを下回らないことなどがある。承認の条件としてT-Mobile USAの一部資産を手放すことを当局が求めた場合、T-Mobile USAの価値が下がる可能性がある。

 米メディアの報道(Bloomberg)によると、Deutsche Telekomの株価は9月5日の終値が前日比4.6%減の8.33ユーロとなり、DOJが提訴を発表して以来13%下落した。Deutsche Telekom最高経営責任者(CEO)のRene Obermann氏は9月1日付けの従業員向けニューズレターで、「(AT&TによるT-Mobile USA買収は)Deutsche Telekomの株主、T-Mobile USAの従業員、顧客、そして米国にとっても最良の選択だ」との考えを示し、「嘆いても意味が無い。当局によって訴訟が起こされ、そしてわれわれはそれに対処しなければならない」と述べた。