企業会計基準の調査研究や開発を担当する財務会計基準機構(FASF)は2011年9月5日、「第13回基準諮問会議」を開催。最近の会計基準の策定状況やIFRS(国際会計基準)へのコンバージェンスの状況など、最近のASBJ(企業会計基準委員会)の活動について委員に説明した。基準諮問会議はFASF内の組織で、企業の会計基準を策定しているASBJの審議や運営に関して検討する。企業の経理・財務の担当者や学者、関連団体の代表者などで構成している。
特に委員から質問が出たのが、ASBJの基準の策定状況を示した「プロジェクト計画表」の表示についてだ。ASBJはこれまでIFRSと日本の会計基準(日本基準)とのコンバージェンス(収斂)の進捗に合わせてプロジェクト計画表を定期的に更新・表示してきた。最新版は10年12月に更新したものになっている(関連記事:ASBJがIFRSコンバージェンス計画表更新、「企業結合」「無形資産」公開草案は来年3月に延期)。
だが7月29日に開催した第229回企業会計基準委員会で、プロジェクト計画表の表示をいったん取りやめることを決定した。理由についてASBJは、IFRSと米国会計基準とのコンバージェンスプロジェクト(MoUプロジェクト)が遅延していることや、金融庁の企業会計審議会でIFRSの適用とコンバージェンスについて見直しの議論が進んでいることを挙げている(関連記事:IFRS強制適用について11論点を提示、企業会計審議会が開催 )。
今回の基準諮問会議では、「財務諸表の作成者の立場からすると、プロジェクト計画表が示されないのは不便だ。いつ再掲されるのか」との質問が委員から出た。これに対し、ASBJ側は「現状では、再掲時期を明らかにできない」との趣旨を回答した。
IASBとの合同会議の回数を増やすよう要請
MoUプロジェクトは「収益認識」や「リース」など優先度が高い項目について、11年6月にも完了する予定だった。しかし、最も遅い場合では12年中に延期になった。ASBJは、MoUプロジェクトの状況を踏まえてプロジェクト計画表を更新しており、MoUプロジェクトの完了時期が明確にならないと計画を立てにくい状況だった。
6月30日から金融庁企業会計審議会が再開したことも、プロジェクト計画表の表示を取りやめた一因となった。審議会での議論の中心はIFRSの強制適用についてだが、表裏一体のテーマとして、IFRSと日本基準のコンバージェンスについても議論している。加えて、日本がIFRSと日本基準のコンバージェンスを進める根拠となっていた「東京合意」の目標期日である11年6月末を過ぎて、「東京合意後のIFRSのコンバージェンスの方針が見えていない」(ASBJ)ため、プロジェクト計画表の表示が難しいとしている。
基準諮問会議ではこのほか、IFRSを策定するIASB(国際会計基準審議会)への意見発信の強化などの状況について、ASBJから報告があった。9月中に欧州で開催される国際会議に出席し、現在は年2回開催しているIASBとの合同会議の回数を増やすよう働きかけたり、「当期純利益の表示」といった日本企業にとって重要な項目について存続するように訴えたりしていくとの方針を明らかにした。
ASBJ自体の運営方針などについても議題になった。金融庁が8月25日に開催した企業会計審議会で提案した「今後の議論・検討の進め方(案)」の11項目の一つに、「ASBJのあり方」が含まれていたからだ。諮問会議の委員からは「ASBJの委員の人数を絞った結果、産業界からの意見が取り入れにくくなったのではないか」といった意見が出た。