「パソコン(PC)のプラットフォームは登場から30年近くたち、その限界にきている。新しいプラットフォーム、簡単に使えるもの、そしてモバイルファーストの時代になっている。グーグルのCEO(最高経営責任者)のときからこのことは強調していたが、いまやトップレベルのプログラマはモバイルアプリから作る。最も優れたベンダーはモバイルサービスから提供していく」――。
2011年9月1日、サンフランシスコで開催された米セールスフォース・ドットコムのイベント「Dreamforce 2011」に米グーグルのエリック・シュミット会長が登壇(写真1)。セールスフォースのマーク・ベニオフCEOとの対談を通して、これまでのIT業界の足取りを振り返りつつ、今起こっている変化と将来を展望した。
「ユーザーは複雑なシステムを作る必要はない」
米サン・マイクロシステムズ(米オラクルが買収)のCTO(最高技術責任者)、米ノベルのCEO、そして米グーグルのCEOと一貫してIT業界の中心で活躍してきたシュミット氏は、現在のクラウドコンピューティングを「ユーザーが力を蓄えることができる」システムであると説く。
「複雑なシステムをユーザーは持つ必要はない。何かしようと思ったら昔は何年もかけたが、今はそういう時代ではない」といった現状分析から切り出し、「セールスフォースはうまくその波に乗った」とまずは同社を評価した。
一方のベニオフ氏は「ビノッド・コースラ(サンの共同設立者、元CEO)や、ビル・ジョイ(サンの共同設立者、元チーフサイエンティスト、BSDの生みの親)、スコット・マクネリ(サンの共同設立者、元CEO)、ジェームズ・ゴスリング(Javaの生みの親)といった業界人なら誰しもが知る著名な技術者・経営者の名前を挙げ、「これらの偉人たちといっしょに仕事をしていた」と、サン時代のシュミット氏を表現した。
これを受けたシュミット氏は、サンが提唱した”Network is computer”が今のクラウドコンピューティングと同じメッセージを出していたことを振り返りつつ、オープンシステム、オープンWebプラットフォームといったサンの“遺産”がIT業界のトレンドに絶えず影響を与え続けてきたことなどを述べた。