米AT&TがドイツDeutsche Telekom子会社の米T-Mobile USAを買収する計画について、米司法省(DOJ)は独占禁止法訴訟を起こしたことを現地時間2011年8月31日に明らかにした。

 DOJは、同買収が実現すれば、無線通信サービスの競争が鈍化し、価格の高騰とサービス品質の低下を招く可能性があると判断。米国民にとって選択肢が減り、革新的製品の登場を妨げることになるとの懸念を示した。

 DOJによると、AT&T、T-Mobile USA、米Sprint Nextel、米Verizon Wirelessの4大キャリアで国内モバイル加入者の90%以上を占めている。またAT&TとT-Mobile USAは、米国携帯電話サービスの提供エリア中、潜在ユーザーが多い上位100エリアのうち97エリアで競合している。DOJは、これまで伝統的に低価格サービスを提供してきたT-Mobile USAが競合から外れることで、残る3社間の競争は弱まると指摘している。

 AT&Tは3月20日に、T-Mobile USAを約390億ドルで買収することでDeutsche Telekomと合意したことを発表した(関連記事:AT&TがT-Mobile USAを約390億ドルで買収へ、米国民95%にLTE提供を目指す)。これに対してSprintが強く異議を唱えて買収阻止を政府に働きかけたほか、ニューヨーク州も調査を開始した。こうした反対意見が上がる中、AT&Tは「買収が実現したあとも市場の活発な競争は確実に維持される」と主張し、米Facebookや米Microsoft、米Oracle、カナダResearch In Motionを含む企業などから買収計画への支持を得ていることを強調した(関連記事:AT&T、T-Mobile買収計画に対するMicrosoftやFacebookなどの支持をアピール)。

 AT&TはDOJの発表を受け「積極的に法廷で争う」としている。同社はこれまで繰り返しDOJと会合したが、訴訟を検討しているそぶりなどまったく無く、「驚きとともに落胆している」と同社副社長兼法務顧問のWayne Watts氏はコメントした。

 同買収計画が当局の承認を得るには、AT&Tはさまざまな譲歩を強いられるだろうと米メディア(Businessweek)は報じている。あるアナリストは、AT&TがT-Mobile USAの所有する帯域および加入者の30~40%を手放すことになると見ている。またAT&Tは同日、買収が承認された場合、国外にアウトソースしているコールセンターの業務5000人分を米国に戻すことを提案した。

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[発表資料(2)]
[発表資料(3)]