富士通は2011年8月30日、企業が大量のデータを分析・活用するための基盤サービス「コンバージェンスサービス・プラットフォーム(CSPF、仮称)」を発表した。PaaS(Platform as a Service)の形態で提供する。

故障感知や利用状況分析、「誰も考えつかなかった用途」も

 CSPFは大きく次の3つの機能群で構成する。1つ目が、センサー技術などを使って企業活動や社会活動、環境の動きをデータ化し蓄積する「センシング」機能群。2つ目が、取得したデータを分析して企業や社会にとって有意義なルールや将来予測を引き出す「コンテキスト抽出」機能群。3つ目が、ルールや将来予測に基づいて機器やサービスを自動制御したり、人間に推薦情報(レコメンド)を出したりする「ナビゲーション」機能群、である。企業はこれらの機能群を使いながら、CSPF上にアプリケーションを開発する。

 富士通は記者向け発表会で、製造業や小売業、スマートシティなどにおけるCSPFの適用例をいくつか挙げた。例えばプラント保守業務がその1つ。装置のゆがみや振動、においなどこれまでよりも多くの情報を取得できるセンサーをプラントの各所に配置。このセンサーから得られたデータと、熟練メンテナンス要員が持つ故障に対する予知的な感覚と付き合わせるアプリケーションをCSPF上に構築することで、プラント保守の精度向上が期待できるという。

 ほかにも、家電や自動車などが実際に顧客の手に渡ったあとの動作データを分析して次期モデル開発の参考にする、店舗内の監視カメラの映像から顧客の動きを分析して店舗改良の参考にする、といったアプリケーションがCSPFで実現できるという。富士通の川妻庸男執行役員常務コンバージェンスサービスビジネスグループ長は、「CSPFは正式発表する前から複数の顧客企業に紹介している。ある海外の顧客企業とはすでに商談として話が進んでいる」と話す。「CSPFが対象としているのはまだ新しい分野。誰もが考えつかなかったアプリケーションが実現できるかもしれない。まずは成功事例を作る。ベンチャ企業向けの料金メニューも用意して、広くいろいろな人にCSPFで“遊んで”もらおうと考えている」(川妻常務)。

異なるデータを統合、マッシュアップも

 CSPF上には、異なる種類のデータを統合的に扱える機構を実装。これにより、センサーによって得られたデータ、取引などから得られた業務トランザクションデータ、インターネットなどから収集したテキストデータ、音声やビデオなどのバイナリデータなどを組み合わせて分析できるという。「この基盤を用意することで、さまざまな角度から有意義なルールや将来予測を見いだすことが可能となっている」(藤田和彦クラウドプラットフォーム開発本部コンバージェンスサービスプラットフォーム開発統括部長)。分散バッチ処理ソフト「Hadoop」も組み込んである。

 また、地図サービスや天気予報サービス、鉄道運行情報サービスなど既存の各種Webサービスと組み合わせるマッシュアップ機能も備える。例えば外部の気象データや鉄道運行データを取り込んでCSPFで交通予測情報を作成し、Webブラウザの地図上にプロットする、といった処理が可能になるという。

一連の機能を提供、「準備を8割肩代わり」

 最近、利用可能な情報の量が指数関数的に拡大する状態を「ビッグデータ」と呼ぶことが増えている。富士通の川妻常務は、「ビッグデータを収集、分析、活用するための一連の機能を備えたPaaSサービスは、CSPFが世界初」とアピールする。「CSPFで想定しているようなアプリケーション開発は、技術的には可能だったが、顧客が実際にアプリケーションとして実装するには多くの準備が必要だった。CSPFでその準備を8割方肩代わりできる」(川妻常務)。

 CSPFのサービスを提供するに当たって、富士通は顧客企業をサポートする窓口「バリューセンター」を用意。データの活用方法や分析方法も含めてトータルで支援するとしている。

 サービスは2段階で提供する計画。第1段階の「V.1」の提供は2011年度第4四半期(2012年1月~3月)を予定する。ここではまず先行版という位置づけで、基本機能の提供を進める。「このときに、どのようなレベルでCSPFのAPIを公開するのが顧客にとって望ましいかなど、サービスの詳細を固める」(藤田統括部長)。第2段階の「V.2」の提供は2012年度第2四半期(2012年7月~9月)。ここで本格サービスとして一連の機能をフルセットで用意する予定。サービスの料金体系は未定。