写真●SAPジャパンの安斎富太郎社長
写真●SAPジャパンの安斎富太郎社長
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 「第1、第2四半期とも業績は前年同期比20%以上のプラス成長を達成できた。この調子で2ケタ成長を続けていくことが目標の一つだ」。SAPジャパンの社長に2011年8月15日に就任した安斎富太郎社長は8月30日、社長就任に伴う記者会見を開催し、インメモリーデータベース(DB)の「HANA」や買収した米サイベースの技術を利用したモバイル関連製品などを「成長分野」として引き続き注力することを明らかにした(写真)。

 2011年上期(1~6月)のSAPジャパンの売上高は、前年同期比24%増の2億9300万ユーロ(IFRS=国際会計基準ベース)だった。安斎社長は、「リーマンショック後、企業は攻めの分野のIT投資を増やしている。東日本大震災で一時期、企業のIT投資は凍結になったが、幸いにしてすぐに投資が再開された」と説明する。

 特に伸びているのが、「企業経営のスピードアップや柔軟性を支援するHANAやモバイル関連」だと安斎社長は言う。売上高に占めるERP(統合基幹業務システム)パッケージ事業とその他製品の割合は、「昨年度が75対25だったのに対して現状は60対40になっている。米国は50対50なので日本も近づけていきたい」(安斎社長)。

 特にHANAについては、「IT業界に30年以上勤務しているが、歴史を変える製品だと思っている」(安斎社長)と強調する。安斎社長は、「カラム型を採用したり、超並列処理が可能なデータベースソフトはほかにあると思うが、それをインメモリー技術で実現しているのは当社しかいない」と自信を見せた。2010年末の発売以来、日本企業への導入も進んでいるという。

 ERP事業も「新分野に比べて伸びは少ないものの、中堅企業向けを中心に2ケタ成長は続いている」(安斎社長)状況だ。好調である中堅企業向けには「クラウドサービスを提供しているパートナー企業と協業して、ERPをクラウドとして提供するサービスを拡大していきたい」とした。

 HANAやモバイル関連分野とともに、安斎社長が注力するのがパートナー経由の間接販売の強化だ。新分野製品の技術研修を強化したり、パートナーを独本社や中国の研究施設に招くといった施策をした結果、「間接販売が前年比で1.5倍増え、パートナー満足度も8ポイント上昇した」(安斎社長)。SAPジャパン側も営業担当者の評価制度を変更し、「直接販売か間接販売かを問わずに営業担当者の業績として評価できるようにした」(同)という。

 SAPジャパンにとって、安斎社長は約3年振りの日本人社長となる。この点について安斎社長は、「独本社から社長就任を告げられた際、日本で起きていることは日本人のほうが分かるだろうと言われた。顧客視点に立てるという意味で、確かに日本人社長のほうがふさわしいというのは間違いない」と強調した。